新しい本に出会うには、信頼できる選者が薦める本を手に取るのが早道です。
大型書店「リブロ池袋本店」の元統括マネージャー。同店閉店後に退職し、荻窪に「Title」という自分の店を開いた辻山良雄さんが薦める本です。
これは発見です。普段何気なく見過ごしている風景の中にも、うわべだけのファッションにとどまらない「学びと実践」を読み取ることができます。日常生活に欠かせない食卓の上に可能性がひろがっています。本が新たな気づきをもたらしてくれるのです。
「田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」」渡邉格 著(講談社)
「気づけば定職にもつかぬまま、30歳になろうとしていた。どんな小さなことでもいいから『ほんとうのこと』がしたい。初めて自分の心の奥底から出てきた、その声に従い、僕はパン屋になることを決めた」マルクスと天然麹菌に導かれ、「田舎のパン屋」へ。そこで実践する、働く人、地域の人に還元する経済と暮らしが、いま徐々に日本社会に広がっていく。ビール造りの場を求め、さらに鳥取・智頭町へ。新たな挑戦を綴った「文庫版あとがき」も収録。
田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」 タルマーリー発、新しい働き方と暮らし (講談社+α文庫)
- 作者: 渡邉格
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/03/17
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログを見る
パンをつくる「腐らない」イースト菌に疑問を感じ、天然麹という「腐る」世界にチャレンジした筆者の着眼と行動。経済も貨幣も「腐る」を中心にすると新たな世界が見えてくる。
「重力と恩寵」シモーヌ・ヴェイユ 著(岩波書店)
たとえこの身が泥の塊となりはてても、なにひとつ穢さずにいたい―たえまなく襲いかかる不幸=重力により、自らの魂を貶めざるをえない人間。善・美・意味から引きはがされた真空状態で、恩寵のみが穢れをまぬかれる道を示す。戦火のなかでも、究極の純粋さを志したヴェイユ。深い内省の跡を伝える雑記帳からの新校訂版。
誰もが経験する苦労、不幸、悲しみ。自分の魂を穢すことなく生きる道を模索した言葉の数々。
「その他の外国語 エトセトラ」黒田龍之助 著(筑摩書房)
英語、ドイツ語などのメジャーな外国語ではなく、「その他」とまとめられてしまうけど、世界のどこかで使われていることばがある。それらの無数のことばとの出合いやお付き合いや別れ?を描いていくエッセイ集。役には立たないかもしれないけれど、これまで以上に外国語が好きになること、間違いなし。文庫化に際して、「十一年目の実践編チェコ共和国講演旅行記」を追加!
書店の外国語学習コーナーに十把一絡げで置かれてしまう「その他の外国語」。ローカルな外国語に注ぐ愛情あふれる言葉の話。