「絶望老人」新郷由起*1 著(宝島社)
近年、「高齢者の貧困」がクローズアップされるようになり、「老後の幸せはカネ次第」との認識が一人歩きを始めた感も拭えない。
さらには、「一人ぼっちは不幸」「無縁は罪悪」との決め付けや価値観も世間的にはいまだ根強い。では、カネさえあれば老後は安泰なのか。
頼れる血縁者のいない高齢者は皆、哀れで、誰もが悲惨な末路を迎えるのか。独居老人は全員が侘しくて、寂しさに咽び、孤独で不幸なのか。
気が遠くなるほど長くなった老いの日々を幸福に導くもの、絶望へ追いやるものとは何か――。
「老後破産」とは、年金収入より支出が多い状態が継続し、すでに預貯金がつきている状態をさします。2014年の段階で、約200万人の高齢者が老後破産状態と言われています。そのうち生活保護を受けているのは83万世帯。生活保護受給世帯全体の51%を高齢者が占めると言われています。(全日本年金社組合東京本部年金相談室長・芝宮忠美さん)
定年後の収入が40万円近くあっても、親の介護費用や配偶者の病気が重なれば、わずか5年弱でお金がなくなります。
具体的に数字を出されて将来の自分をシミュレーションをされると、我が身は自分で守らねばならない気になります。未来への不安感が積み重なって内向きな世論を作り出しているように思います。
本書は、朝日新聞経済部取材班が老人社会の実態をルポした社会派ノンフィクション。近い将来3人に1人が高齢者となる日本では、老人をめぐる状況が急速に悪化している。全国各地に増加する「無届け老人ホーム」、北海道で増殖する「老人下宿」。男女混合で雑魚寝させる「お泊りデイ」施設では、不衛生な環境でノロウイルスが蔓延しても、料金が安いため入居を希望する家族は後を絶たないという。
一方、特別養護老人ホームを経営する社会福祉法人のなかには、ぼろ儲けで「老人食い」状態のブラック法人が出現。また、特定の施設にお金を落とすため老人に必要以上の料金を支払わせようとするケアマネージャーも多数いるという。未来に目を向けると、2025年以降は団塊世代が後期高齢者入りすることから、さらに悲惨な状況が予想される。本書は、このような厳しい現実を乗り越えるためのヒントを提示する。