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本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

絶賛の評価集める 学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで

急な動きを見せている本。

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学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで岡田麿里 著(文藝春秋) 

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話題を呼んだアニメ「あの日みた花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」。実は、そのアニメの脚本を書いた岡田麿里自身が小学校で学校に行けなくなっていたのです。これは、母親と二人きりの長い長い時間をすごしそして「お話」に出会い、やがて秩父から「外の世界」に出て行った岡田の初めての自伝。

アニメ本といっても取り扱う書籍は、グラフィック関係や作家論、シナリオ術といった制作者側から見たアニメ関連書籍の品揃えに気を遣う書店です。これは当たるだろうと、少し多めに入荷したのが脚本家・岡田麿里さんの自伝です。今朝のおはよう日本で企画が組まれたこともあり、かなりの勢いで動き始めました。

特徴的だったのは、報道番組や文化・福祉の担当者からも引き合いがあったことです。これは社会問題として著者の自伝が評価されていることを示します。著者の代表作2点は絶望的な思春期に遭遇した人の物語です。自分を見失い、生きづらさに悩む人々は、人間を描くことを生業とする放送局員にとって描き方だけでなく接し方も含め、丁寧に扱わざるを得ない取材対象です。

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語ることで救われる

放送では、学校に行けなくなった頃の体験が本人口から語られていました。(人に心を開く意味での)声を失い、母親との関係に悩みという体験は創作ではなく経験であるところに、事実の重みを再確認させられます。高校時代と思われる著者の写真を見ると、彼女が被った体験が伝わってくるような気がしました。経験を作品にすること、つまり自らをさらけ出すことで彼女自身が救われたわけです。

2作品が観客の心を打ったのは、商品としての脚本を作り出すという目的の奥底に、救いという自分自身のテーマがあったからなのでしょう。本書の目次を見ると、その体験を伝えることで同じ悩みに直面する人を救いたいという思いが伝わってくるような気がします。

アニメ担当者の話では「終了したばかりのアニメシリーズの脚本が炎上していて気の毒だ」という状態だそうです。暗い井戸の中に降りていって水を汲んで戻ってこれる希有な脚本家だけに気になります。本書も炎上の素材に上げられていると聞きましたが、制作者の間では高い評価を集める本になりそうです。

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週刊文春書評ほか

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