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第三回日本翻訳大賞受賞作品

第三回日本翻訳大賞作品「すべての見えない光」「ポーランドのボクサー」が届きました。

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小説、詩、エッセイ、評論など、日本語に翻訳された新訳作品を対象とした賞が日本翻訳大賞です。 私たちは最終的に日本語に翻訳されて出版されたものを手に取りますが、翻訳された出版物はかなりの点数にのぼる上、原作はさまざまな言語で書かれています。作品の評価基準を決めるのもたいへんな賞ではないかと思います。

不思議なことに翻訳者を顕彰する賞はこれまでほとんどありませんでした。そこで「もっと翻訳者に光があたるように」と翻訳家の西崎憲が発起し、設立を決めたのが<日本翻訳大賞>です。

このプロジェクトは、2014年にクラウドファンディングにより設立されたことを知るにつけ、賞から発せられる熱量の強さがわかります。

翻訳家に光を!日本初、翻訳家がつくる翻訳賞「日本翻訳大賞」の設立プロジェクトをご支援ください! - クラウドファンディングのMotionGallery

「すべての見えない光」アンソニー・ドーア 著/藤井光 訳(新潮社)

ラジオから聞こえる懐かしい声が、若いドイツ兵と盲目の少女の心をつなぐ。ピュリツァー賞受賞作。孤児院で幼い日を過ごし、ナチスドイツの技術兵となった少年。パリの博物館に勤める父のもとで育った、目の見えない少女。戦時下のフランス、サン・マロでの、二人の短い邂逅。そして彼らの運命を動かす伝説のダイヤモンド――。時代に翻弄される人々の苦闘を、彼らを包む自然の荘厳さとともに、温かな筆致で繊細に描く感動巨篇。 

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

 

 

ポーランドのボクサー」エドゥアルド・ハルフォン /松本健二 訳(白水社) 

少数派的状況を生きる自身のルーツを独特のオートフィクション的手法で探究。ユダヤグアテマラの鬼才による日本オリジナル短篇集。

ポーランド生まれの祖父の左腕には、色褪せた緑の5桁の数字があった――アウシュヴィッツを生き延び、戦後グアテマラにたどり着いた祖父の数奇な物語をめぐる表題作ほか、異色の連作12篇。

「彼方の」――グアテマラシティの大学で短篇小説の授業を講じる「私」は、隠れた詩才をもつ学生フアン・カレルと出会うが、ある日を境にフアンは突然授業に出てこなくなる。彼の身を案じる「私」は、フアンの実家を訪ねて先住民の村に向かう。

「エピストロフィー」――アンティグアで開かれた文化フェスティバルで、「私」はセルビア人ピアニストのミラン・ラキッチと知り合う。自由な精神の持ち主であるミランの演奏に魅了された「私」は、彼がジプシーの血を引いていることを知る。

 

 

ポーランドのボクサー (エクス・リブリス)

ポーランドのボクサー (エクス・リブリス)

 

 

日本翻訳大賞とは

12月1日~翌年の12月末までの13ヶ月間に発表された翻訳作品中、最も賞讃したいものに贈る賞。一般読者の支援を受けて運営し、選考にも読者の参加を仰ぐ。選考委員は金原瑞人岸本佐知子柴田元幸西崎憲松永美穂の各氏。  

第三回日本翻訳大賞受賞作 決定 | 日本翻訳大賞公式HP