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3年でプロになれる脚本術

ハリウッド映画の脚本術は「ヒットのための黄金律」をまとめたものでした。セオリーを分析した”ゲーム攻略本"のようなものです。一度ハリウッド流の脚本術を読んでしまうと映画の見方が180度(悪い方に)変わってしまうので注意した方が良さそうです。いっぽう、日本の脚本術は脚本家に「なろう」とする人のための本のようです。

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「3年でプロになれる脚本術」尾崎将也 著(河出書房新社

大ヒットドラマの脚本はどうやって生まれるのか。人気脚本家が体験をもとに初歩から応用までの技術を惜しみなく綴る初の脚本指導書。

「3年で」ということは、一年や二年の修行ではプロになれないことを意味します。知人の脚本家は一人前になるまで10年間かかりました。それも師匠となる脚本家に"書生"のように付くという修行をしてのことです。才能のある脚本家の中には一発で認められる人もいますが、 注文を切らすことなく仕事を続ける脚本家は、ほぼ例外なく若い頃から下積み生活を続けた経験を持つています。テレビ番組の制作現場も同じようなものです。仕事を進める上での決まりやしきたり、簡単なルールの説明はありますが、肝心な仕事は習うのではなく、慣れるように現場で学ぶのです。

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現場で七転八倒しながら身につけるスキルをまとめた”指導書”が最近増えています。インターネットの動画チャンネルが増えたため、コンテンツが慢性的に不足しているという背景があるかもしれません。誰もが簡単に動画制作ができるようになった事情があるのかも知れません。コンテンツを求めるメディア側と、コンテンツを作りたいと考えるクリエイター予備軍の需給関係が大きく変化しているのでしょう。

"師匠"を持たない作る側の人たちにとって頼りになるのはマニュアルしかありません。ただ、マニュアルは料理の献立表のように、この通りやれば料理ができるという類いのものではありません。脚本とは設計図をもとにつくる"再現"ではないのです。

ですから、この本のターゲット層は初心者ではなく、ある程度経験を積んだ若手制作者です。これまでの行いを顧みて、自分に足りない部分とはなにか考える人が、ヒントを得るために読むべき本なのです。

脚本家と仕事をうまく進めるために、委託側に立つ制作者も手に取るはずだ・・・と、書店員は売れ行きに期待を寄せています。

3年でプロになれる脚本術

3年でプロになれる脚本術