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ブラックボックス化する現代 変容する潜在認知

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ブラックボックス化する現代 変容する潜在認知」下條信輔*1 著 (日本評論社

私たちの現代社会は巨大化し複雑化して、作動原理がわからないブラックボックスと化してきたのではないか。そして私たち自身の深層心理をも、受け身の反応マシンのようなものに変えてしまうのではないか――。

人工知能や「心を読む技術」の進展がもたらした、かつてないジレンマとは。さまざまな社会事象の分析を通して、現代が直面するリスクを横断的に見据える視座を示す。 

これから先「予測が当たらなくなる」「過去のブラックボックス化が起きる」「偽装が増える」という三つの予測に加えて、現代人の「ブラックボックスであっても受け入れる習性」はますます強まるだろうと著者は予測します。心のブラックボックス化とは、刺激に対して複雑な判断ができず、型にはまった反応しかできなくなることを言うのだそうです。主体的な判断を停止し、複雑なシステムに依存してしまうことは、今でも日常的に起きていますが、それでも重大な支障が起きないことが「安心」という"不安"を生み出し続けているように思えます。まさに技術と哲学とが融合したような世界にどのように向き合うか、手がかりを掴もうとする努力が必要なのでしょう。 

 

 

 

*1:認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学Ph.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。