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新貧乏物語――しのび寄る貧困の現場から

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「新貧乏物語――しのび寄る貧困の現場から」中日新聞社会部 編(明石書店

私たちの社会を確実に蝕み続けている貧困問題。最近大きく取り上げられるようになった子どもの貧困のみならず、あらゆる世代にわたって、貧困に苦しむ人たちが増えている。だが、意外にもその姿はなかなか見えてこない。当事者への取材記事のほか、なぜ貧困問題が起きているのか、その背景を理解するための客観的なデータも加え、いまここにある貧困を描き出す。

他人が自分と同じように見えている限り、貧困は実感しにくい社会問題です。差別を助長する意味ではなく、他者は自分と違う生活や価値観を持っているということがわかってはじめて相手の立場に立って考えることができます。さらにこの問題の根深さを理解するには時間がかかります。日用品を買うにも通帳の残高が頭に浮かぶ。返済のことを考えるなど、本来なら費やす必要がない時間や労力を絡め取られる消耗感は伝わりにくいものがあります。副題にある「しのび寄る」という言葉が示す視点に、貧困を考える鍵があるように思います。手に取る放送局員の姿を見かける本の一つです。 

新貧乏物語――しのび寄る貧困の現場から

新貧乏物語――しのび寄る貧困の現場から