「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」若林正恭 著(KADOKAWA)
読者の共感を呼んだ前作「社会人大学人見知り学部 卒業見込」を出発点に、新たな思考へと旅立ったオードリー若林の新境地!
キューバはよかった。そんな旅エッセイでは終わらない、間違いなく若林節を楽しんでもらえる、そして最後はホロリと泣ける、待望の書き下ろしエッセイです。
「俺は5冊くらいタイトル買いして、50ページくらい読んでつまんなかったら捨てる、っていうのを繰り返してて。新書のコーナーが好きで、タイトルをダーッて読んでいくと、まさに今知りたいってことがタイトルでドンってくるときがあって」
オードリー若林さんの話を聞くと、この人もまた、呼吸のように本を読まないと生きてゆけない人なのだということがわかります。周囲に同調しながら生きているのが普通の私たちであるなら、多分若林さんは世間の常識や評判から自分が剥離していることを自覚しているのでしょう。読みながら自分の位置を確認しているのだと思います。
表現することは裏返すと自分を探すことです。社会生活の中でくすぶっている気持ちや折り合いがつけられない思いと向き合わざるをえない仕事です。立場は違いますが放送局員の中にも自分探しを続ける人はいて、そんな人に若林さんの"まじめな"著作は刺さるように思えます。