「リクルートの すごい構“創"力 アイデアを事業に仕上げる9メソッド」杉田浩章*1 著(日本経済新聞出版社)
【ステージ1】「0→1」 世の中の不をアイデアへ
-メソッド1不の発見…新規事業の起点となる「不」を探す
-メソッド2テストマーケティング…発見した「不」がビジネスとして成立するのかを見極める
-メソッド3New RING(インキュベーション)…アイデアを事業に育てるサポート
【ステージ2】「1→10」前半 勝ち筋を見つける
-メソッド4マネタイズ設計…圧倒的な収益を獲得するためのモデル設計
-メソッド5価値KPI…勝ちにつながる行動や指標を発見・特定する
-メソッド6ぐるぐる図…PDSを高速に回しながら、勝ち筋を探る手法
【ステージ3】「1→10」後半 爆発的な拡大再生産
-メソッド7価値マネ…発見した価値KPIに基づき、拡大させていくためのマネジメント
-メソッド8型化とナレッジ共有…価値マネを実践するための行動を「型」に落とし込んで共有する
-メソッド9小さなS字を積み重ねる…現場でつかんだ〝兆し〟を吸い上げる仕組み
ボストン コンサルティンググループのコンサルタントがリクルート社の協力を得て社内関係者をヒアリングしてまとめた本です。
「リボンモデル」「不の発見」「価値マネ」「ぐるぐる図」「価値KPI」・・なんだかよくわからない言葉が共通語として使わるリクルート社。それだけで内部のことをよく知らない人は「すごい会社だ」と圧倒されてしまいます。
「いつだって新しいことは、古いことを言い換えているだけ」と佐藤慶は述べています。「不の発見」にしてもよくよく考えると「不便なことに商機あり」という当たり前のことです。この会社の強いところは、世の中の些細な不便や不満を拾い上げ、商売になるまで解決策を考えること。それを社員が理解して実行する会社だということがわかりました。
リクルートのすごいところは「ゼクシイ」「ホットペッパー」や「R-25」など、消費者が情報を探すときにお世話になる"あのサービス"が、年月をかけた企画ではなく、思いつきのアイデアに近いことを、よってたかって素早く実行するエネルギーと、見込みのないものはすぐ撤退する潔さにあるといいます。著者は実際に担当した人たちの話をもとに、企画がどのように作られるのか箇条書きで分析し、その仕組みを解説しています。成功例、失敗例を知るうちに古い体質の会社ではできないことをリクルートはなぜ可能なのかが見えてきます。
一つ気になったのは、どの会社も抱えるダメな部分・・それは人間が持つ弱さに由来するものですが・・が見えてこなかったところです。それは第三者的な視点ではなく、企業広報的な姿勢から離れられなかったことにあるのかもしれません。
プロジェクトは部局をまたいで大勢の組織や人が関わることが普通です。しかし全員の意思が一つにまとまるなんて全体主義国家のようなことは100%起こりません。何かしら組織の壁。年齢ごとの価値観の差などが道を塞ぎます。困ったことを主張する人だって出てきます。そこが人間組織の面白さでもありますが、ところが本書では社内の人間くささが意図的に脱臭されています。そのため、登場人物たちの立ち居振る舞いがロボットのように画一的な印象なのです。ですから本書を読んで「さあリクルートを真似よう」と頑張っても真似られない部分があることがわかります。
ビジネスマンにとっては「ヒント集でいいのだ」といわれるかもしれませんが、マスコミ関係者にとっては心に響かないところがあり売れ行きが伸びません。そこが本書が抱える限界なのかも知れません。