本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

いのち愛しむ人生キッチン

92歳になった今でも教室に立ち生徒に料理を教え続ける料理研究家がいます。

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「いのち愛しむ人生キッチン」桧山タミ 著(文藝春秋

九州地方で活躍する92歳の現役料理家タミ先生の初の著書。
台所に立つ女性の心の拠りどころになるお話が一冊にまとまりました。
タミ塾の愛情レシピも収録。 

7月末に発売されたこの本。92歳という著者の年齢と、現役で教壇に立つ姿。含蓄の富んだ人生の言葉が静かな話題となりました。テレビ制作者としては見逃すはずもなく。さっそく取材が行われ、8月11日のニュースウォッチ9で放送されました。

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著者の桧山タミさんが教えるのは福岡市にある自宅兼教室です。週に3回開かれる料理教室には20代から70代までの女性たちが集まってきます。f:id:tanazashi:20170828163656j:plain
「タミ塾」とも呼ばれるこの料理教室の特徴は、旬の食材を使って料理を作ることです。

 

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桧山さんは1926年、福岡市に生まれました。32歳の時夫が死去。2人の子どもを育てるため、料理教室で生計を立ててきました。料理研究家の故・江上トミ先生のもとで、戦前・戦後を通じ38年間学び、61年に「桧山タミ料理学院」を開設しました。

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目に飛び込んできたのは、見事に整理された調理器具の数々。
でも、どこの家でも見かける、あるものが見当たりません。

桧山タミさん
「文明の利器なんて何もないですから。」

桑子
「電子レンジはありますか?」

桧山タミさん
「使ったことがない。」

桑子
「温める作業には何を使う?」

桧山タミさん
「ごはん?蒸し器に入れて。
昔からあるものがとってもおいしいから。」

72年を境に、フランス料理などの高級料理の指導をやめ、素材にこだわり、昔ながらの日本料理を教え続けています。

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「全部、自分のできる範囲ですればいい。手を入れたからといって、おいしいものではない。“早く食べたい”という方が先だったら、早く出してあげた方がいい。」

生徒が学ぶのは料理方法だけではありません。

料理の知恵だけでなく、長い人生の中で培った生活を豊かにする工夫です。

「時代が変わっていってる。それには反対できない。自分で(実践して)いけるものを見つけないといけない。手は抜いてもいいけど、心っていうのは思いやり。その人に対する思いやりを抜いたらだめ。いまごろのお母さんは忙しいから、なかなかできないけど。忙しいってことは、“心を亡ぼす”という字。言葉じゃないけど、思いやり。」

人と人をつなぐ料理とその中に込められた思いが多くの人の心を掴んで離さないように思います。

91歳が語る“人生のレシピ” - 特集ダイジェスト - ニュースウオッチ9 - NHK