本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

ビンボーの女王

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「ビンボーの女王」尾崎将也 著(河出書房新社

ADを辞め、ネットカフェ難民となった麻衣子が、立てこもり事件に巻き込まれた。ところが全国中継で犯人が予想外の要求をしたことから、「大炎上」が始まる!激増するSNSのフォロワー数、番組に出演させようとする元上司、プロデュースしようとする芸能マネージャー、やがて襲い掛かるバッシング…混乱のなかで、麻衣子は本当に大切なものに気づき始める。母との確執を乗り越えて、麻衣子は幸せになれるのか!?大人気脚本家がおくる渾身の小説デビュー作!

書店のレジ近くに立って新刊本を眺めていると、業務用で本を買う人の多さに圧倒されます。

デザイン関係の担当者がやってきて漫画家のくらもちふさこさんを指名して大量の本を注文したりするのを見ると、彼女の代表作「花に棲む」が近々ドラマ化されるのではないかと期待したりします。

もちろん「ドラマになるのですか」などと質問したりすることはありません。世の中の流行廃りを確認するための資料かもしれませんし、対談などの予備知識を得るための本かもしれません。ただ言えることは放送局にとって本はたべものと同じ栄養源です。生きるために読み続けることが一種の生活習慣となっているのです。

読むことで得た知識や感動は放送をつくる骨格になりますが、中にはその過程を再生産して本屋に還元してくれる人もいます。

 「梅ちゃん先生」「お迎えデス。」 「結婚できない男」など今をときめくドラマを数多く生み出してきた脚本家が書いた小説デビュー作は、番組ADが主人公。破天荒な出来事に翻弄される物語には放送局内の人間関係が透かし彫りのように埋め込まれています。貧困女子というキーワードもしっかり押さえたエンターティンメント。人間観察がこの仕事の生命線であることがよくわかります。