本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

マンガ 自営業の老後

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「マンガ 自営業の老後」上田惣子 著(文響社)

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フリーランスとして働く作者が老後に備えて生涯収支を見直したエッセイです。9刷、Amazon会社部門第1位という広告に世相が映し出しているような気になります。

「え? 個人事業主の老後ってやばくないですか! ! 」
こんな会話から始まった本書の企画。
専門家や先輩に、恥をしのんで教えをこい、取材のたびに寝込むほどショックを受けつつも、 教わったことを一生懸命実践していった著者の上田惣子さん。 53歳のイラストレーターの焦りと不安にまみれた「老後不安脱出ルポ」は、 相当おもしろく、胸に迫るものがあります。お金まわりがニガテな上田さんだからこそ書けた税金や保険の知識、必読です! (編集担当)

会社員の生活では、年金や税金のことを深刻に考えないですみます。いざ老後の生活設計を考える事態に直面して狼狽する人も少なくないと思います。私もその一人。自分の貰う年金がいったいいつから、どれだけ貰えるか最近までわかりませんでした。

保険にしても同じで、子育てが終了間際なのにもかかわらず「死亡保険」に入り続けることの無意味さも自分で調べてスッキリ解約することができました。

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はじめは「それは勉強しなかった自分が悪いせい」と自分を責めました。よくよく考えると制度の内容が複雑すぎること、加えて説明にしても万人向けに書かれているため、自分の場合どうなのかという知りたい部分がわからない。つまりサービスがなっていないということもわかってきました。(「年金」という単語一つにしても"制度名"や”商品名"が一緒に扱われています。これを素人が理解できるわけがない)

 

本書は、年金未納(これはまずい)と住宅購入(キリギリスのような生活)というバッシングのタネを抱えながら、老後の生活設計を一から立て直す過程を描く体験リポートです。ある程度生活設計を立てている人から見ると実用性も共感度も低く見えてしまいますが、基礎的な知識にかけている人には参考になると思います。

放送局にはフリーランスの人たちが出入りしますが、この本を読むと彼らは大丈夫か、老後のことを考えているのかととてもお節介な気分が心にわき上がってきます。 

核にあるのはフリーランスのクリエイターが「もう自分は必要とされていないのでは」という社会的承認の不安感 

が描けているからかもしれません。

知り合いのファイナンシャルプランナーに聞いたところ「制度は自己責任だから」と言われました。自己責任ということは「説明はしたよ。(わからないところがあってもそれは君の責任だからね)」ということです。会社であれば近くに事情通がいて教えてくれますが、そうでない人は著者のようないい加減な生活を送る羽目になります。無知の知を知るとはこういうことなのかと思わざるを得ません。

アマゾン評より読書メーターの評の方が的を得ているように思います。

bookmeter.com

 

「健康で笑顔で働けるところまでは働く」というのが当たり前のようですが、最も優れた老後資金対策なのかもしれません。

 

自分を取り巻く状況がおぼろげながらわかったところで読みたい本はこちら。

フリーランスの教科書」見田村元宣、内海正人 著(講談社

フリーランスの人の相談に乗る形で、税理士と社会保険労務士がわかりやすく解説している本です。