「ムー公式 実践・超日常英会話」宇佐和通 著、石原 まこちん (イラスト) (学研プラス)
ありそうでなかった英会話の本。超常現象専門誌「ムー」を発行する「学研」だけができる、英会話の本。UFO、幽霊、陰謀、滅亡・・・・ 備えあれば憂いなし。ムーが贈る超日常英会話を読んでおけば、なにが起きても大丈夫。世界のミステリースポットであなたを救う。
たとえばこんなシチュエーションで、あなたはどう切り抜ける?
When you bend spoons, put them back the way they were!
スプーンを曲げたら、ちゃんと元に戻しておきなさい!
I need to get another room because I'm seeing a ghost in here.
幽霊が出るので、部屋を変えてください。
突如書店の入り口正面に出現した謎の英会話テキスト。
書店員によると、世の中では売れはじめているのであわてて仕入れた本なのだそうです。一応スキット*1らしきものがありますが、よく見ると普通の生活で使うような例文ではありません。
表紙は一見、語学テキストのようなおとなしいデザインです。奇妙に思えるのが"超"日常英会話と描いてある表題です。日常を超えた"非日常"英会話ということなのでしょうか。決定的なのは文字の背景に描かれた「ムー」というロゴです。ムーといえば伝説上の大陸、もしくはそこに存在したとされるムー帝国。書店の常識で言えば月刊オカルト情報誌ではないですか。
限りなくフェイクに近いオカルト系の情報は、事実を扱う放送局にとって真に受けてはならないものです。その本をこの書店が堂々と扱っていいのかという気になります。
書店員によると「この本は超常現象に遭遇したときに使える英会話のテキスト」なのだそうです。超常現象の検証はともかく、英会話テキストとして間違っていない限り問題はないはずと言います。
現実にはあり得ない状況下でしか役に立たない英会話テキストなので、正規のテキスト本コーナーに並べると間違いの元になる。かといって”トンデモ本”という分類にもあてはまらない。だったら堂々と正面に置こうと判断したのだそうです。
世の中は何が起こっても誰も驚かない時代になっています。そんな時代だからこそ謎の英会話テキストに人気が集まっても不思議ではないのでしょう。
*1:skit は「寸劇」のこと。通常会話の実例を示すために演じられる。単語の起源は不明。