「健康格差」マイケル・マーモット 著(日本評論社)
健康は所得だけではなく教育や環境などの社会的要因(SDH)で決まる。そのエビデンスと処方箋を第一人者がユーモアたっぷりに紹介。
格差社会の何が問題かというと、格差を放置しておくといつかその報いは自分に返ってくるからです。一人勝ちを放置したままの社会は、いずれ誰もが不安を抱えることになるのです。
東南アジアや中南米、イギリスやアメリカなどは極端な貧富の差を抱えています。外国旅行の経験がある人はわかると思いますが、それは日本どころの比ではありません。
貧富の格差を目の当たりにした時、相当のショックを受けました。しかし、現地に滞在するうちにその現実が当たり前のように思えてきます。非日常の生活が日常のように見えている社会は所得格差が生み出した産物なのです。
こうした所得格差の大きい地域に住んでいる人には不健康な人が多いことが様々なデータでもあきらかです。
教育年数が短い人は、教育年数が長い人より死亡リスクが約 1.5 倍高く、所得が少ない人は所得が多い人より死亡リスクが2 倍近く高いという話です。
格差は他者への不満や不信を呼び覚まし、自身もストレスを抱えることになります。安心できない社会では、効率が落ち、犯罪も増えます。
社会階層の下層、中間層だけでなく、高階層の人々の健康も危機にさらされます。これを「ソーシャル・キャピタルの仮説」と言うのだそうですが、さながらドミノ倒しのようなことが格差社会では起きやすくなるのです。
格差のない社会をつくることは理想ですが、実現は困難であることは歴史が証明しています。しかし、健康の社会的格差を減らすことは出来そうな気がします。
- 作者: マイケル・マーモット,栗林寛幸, ,栗林寛幸監訳,野田浩夫訳者代表
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2017/08/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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