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あなたの知らない「レトロ特撮」の素晴らしき世界

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「あなたの知らない「レトロ特撮」の素晴らしき世界」山本弘 著(洋泉社

王道の特撮映画から抜け落ちた「知られざる特撮」「珠玉の特撮」の数々。「特撮映画」といえば、ヒーローものか怪獣映画、SF映画を連想するかもしれないが、怪獣や宇宙人が登場しなくとも、すごい特撮シーンを堪能できる映画が、世界にはたくさん存在する――

CGやデジタル技術が普及する前の作品でありながら、
「この時代にどうやって作ったんだ?」という驚きの多い作品群を中心にセレクト。
いわば、本書は「特撮のオーパーツ」を再発掘・再発見し、評価しようという試みである。

デジタル技術の進歩で、誰でも見たこともないような映像を手軽に作れるようになりました。 つい最近まで特撮といえば手間やお金がかかるものでした。フィルムからVTRに移行する頃のテレビ制作の現場。数カットをデジタル処理するのに1時間のリソース(機材とオペレーター要員)が必要だったと年配の制作者から聞いたことがあります。簡単な効果をつけるのにかかる費用は1時間5万円(当時)だったというから驚きです。VTR以前の制作現場で特撮をすることの大変さは想像を絶するものだったと思います。まともに撮影したのでは予算はいくらあっても足りません。さまざまな制約が知恵を生み、新しい映像表現を育てていったことが、本書から読み取れます。

故きを温ね、新しさを知るとは特撮の歴史そのものかもしれません。