本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

ひとり雑誌の魅力「月刊ドライブイン」

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全国のドライブインをルポした「月刊ドライブイン」

全国で32店舗でしか売っていない「ひとり雑誌」です。

渋谷のSHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS で”回収”しました。

「ひとり雑誌」とは執筆や編集、配本もひとりでこなす、いわば個人営業の出版社の本です。

出版したのは橋本倫史さん(34)。*1橋本さんは、2007年に『HB』、2012年に『hb paper』という2つのリトルマガジンをそれぞれ創刊したライターです。

https://twitter.com/hstm1982

hstm.hatenablog.com

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橋本さんのインタビュー記事を読むと分かるのが、「こんなこと考えている人がどこかにいるんだ!」という人に対する旺盛な好奇心です。

自分とは違った体験を持つ他人は凄いという感覚は、なかなか持てないものですが、橋本さんはインタビューを通じて普通の人たちの持つ輝きを伝えてくれます。

「自分が作った雑誌がたくさんの本のなかにまぎれこんで、全然知らない人の手に渡るというイメージが、僕の中では一番ワクワクする」出版することの意味や原点は自分自身にあることが改めてわかります。

このひとり雑誌の対象は「ドライブイン」という舞台に絞られています。綴られているのはドライブインで働く人たちの日常であったり、お客との会話だったりと、わたしたちの生活で見聞きするたわいもない話ばかりです。事件や波乱が起きるわけではありません。それだけに坦々と生きる人の営みという物の重さが伝わってきます。出版物本来が持つ原点というものを感じさせてくれる雑誌です。

 

*1:1982年広島県生まれ。学習院大学法学部政治学科卒業。2007年、リトルマガジン『HB』を創刊。ライターとして『en-taxi』、『SPA!』、『サイゾー』などに寄稿。向井秀徳の語り下ろしによる小説本『厚岸のおかず』の構成を担当する。また、文藝春秋×PLANETS『あまちゃんモリーズ』に「北三陸ストレンジウォーク――触発と拡張のロケ地探訪」を執筆。2012年、リトルマガジン『hb paper』を創刊。2013年には『沖縄観劇日記』や『faifai ZINE』といった、演劇の制作現場をドキュメントするリトルプレスを制作する。