本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

ユニクロ潜入一年

f:id:tanazashi:20171110155843p:plain

 

ユニクロ潜入一年」横田増生 著(文藝春秋

ワンマン経営に疲弊する現場を克明に描く潜入ルポルタージュの傑作!

サービス残業、人手不足、パワハラ、無理なシフト、出勤調整で人件費抑制――。
「(批判する人は)うちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたい」
そんな柳井正社長の言葉に応じ、ジャーナリストはユニクロの店舗への潜入取材を決意。妻と離婚し、再婚して、姓を妻のものに変え、面接に臨んだ――。

週刊文春」誌上で大反響を呼んだ「ユニクロ潜入ルポ」をもとに、一年にわたる潜入取材の全貌を書き下ろした。読む者をまさにユニクロ店舗のバックヤードへと誘うかのような現場感に溢れたルポルタージュである。気鋭のジャーナリストが強い意志をもち、取材に時間をかけ、原稿に推敲を重ねた読み応えのあるノンフィクション作品が誕生した。

映像取材の弱みは、撮影している事実が取材先に丸見えであることです。隠し撮りという手法は残されていますが、カメラという実体を隠すということにおいて様々な点で危険をはらみます。 最終的に頼れるものは自分の目であり、足であることを本書は改めて教えてくれます。

著者の前作「ユニクロ帝国の光と影」は名誉毀損で訴えられました。最高裁で出版側が勝訴した理由に、公益に資する記事は内容が批判的であっても名誉毀損に問われないとして正当性が認められました。

こうした積み重ねが、私たちの知る権利というものを担保しているのです。企業に寄り添ったルポは取材の便宜を得やすく、リスクを心配することはあまり多くありません。しかし、都合の悪いことも明らかにしてこそ、公益性というものは守られ、全体の利益となります。義憤といってもいいかもしれません。これが取材する者を突き動かす原動力です。

最高裁から正当性を得たにもかかわらず、取材先は著者の中間決算会見への参加を名指しで拒否しました。その扱いにジャーナリスト魂が再点火したのが本書の取材に取り組む動機だったと言います。身を削るように鉄壁の防御を固めて取材先の懐深く飛び込んだ取材者の姿勢に学びたいと思います。 

ユニクロ潜入一年

ユニクロ潜入一年

 
ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)

ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)

 
『ユニクロ帝国の光と影』著者の渾身レポート ユニクロ潜入一年

『ユニクロ帝国の光と影』著者の渾身レポート ユニクロ潜入一年

 
潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)

潜入ルポ アマゾン・ドット・コム (朝日文庫)