本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

ニンゲンだもの

歴史に残るであろう怪物企画。

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「ニンゲンだもの」マガジンハウス

SNSで東京のリア充OLのふりをする地方在住の“偽装キラキラ女子”、東大卒以外は人間ではないと言い切る“ハイスペ婚の女”、子育て中の薬物依存体験を告白する“元薬物中毒者”、選挙戦の苦労を語る“元国会議員秘書”…緻密な取材で掘って掘って掘りまくった末に見えてきた、現代の世相と人間たちのリアル。プロ彼女、占い師、宝くじ1億円当せん者、元国会議員秘書…人形劇トーク番組「ねほりんぱほりん」が取材した衝撃の17編と裏話。

人間には表もあれば裏もある。あわせて人間が見えてくる。そんな制作者の意志を感じさせる番組の書籍化。本書のタイトルが番組の隠しテーマとなっていたことが明快に宣言されています。

パレートの法則が示すように、世の中を動かしているのは平均点の人ではなく、極端な人だということは多分みんな知っているはずです。その20%にあたる極端な人を掘り下げて行った人間ウォッチ番組が教育テレビで放送中の「ねほりんぱほりん」です。

取り上げられるネタや登場人物はほとんどスレスレのものや人ばかり。操縦を誤れば番組中止とか抗議が殺到しかねない番組を、制作者は巧みな知恵と工夫。細心の注意(所々で毒も混ぜ込みながら)で乗り切っています。出演交渉で声だけなら出てもいいと言う人をモザイクなしでテレビ電波にあげてしまうところなど手練れの制作者の技が冴え渡ります。(江戸時代の戯作者が取った回りくどい手法にも似ていますが、分かる人には分かる演出といえます)

番組作りを支えているのが放送法

「事実を伝える」ことに加え「意見が異なるテーマは両論併記」という精神です。

ここさえ抑え、極端な人の行動を支える事実や背景を、

「極端に偏らず」にその人の口から聞き出せばいいのです。

番組を支えるのは視聴者の評価。

評価のポイントをひとことでいうと「おためごかし」。

人のためにするように見せて実は自分の利益を図ること。

類語は「忖度」。

この要素が番組から感じられるようになったら打ち切りだと、視聴者は冷静に見ています。

ともあれ、刺激が強い番組ほど得点は満点と0点に偏在する傾向があります。

極端な人たちの考え方や行動は常人の域を超していることに加え、ある種の羨望が混じることから、番組は賛否両論の評価をいただいているようです。

「本に出てくる人たちは気分のいい人ばかりではなく個人的には付き合いたくない種類の人たちで、そういう変人、奇人、非常識人の事情や生き様を知ることで自分になんのメリットがあるのかわかりませんでした。」(アマゾン書評)

そうです。直接のメリットはありません。

自分の内面にある見たくないものを見せられていと感じると拒否感が生まれます。

しかし、自分と違う行動を取るのも人間であると受け止めること。気づきに意味があります。

人間という不可思議な生き物の謎を解く鍵が自分ではない他人にあるかも知れないからです。