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#田井中雅人、 エイミー・ツジモト「漂流するトモダチ アメリカの被ばく裁判」

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「漂流するトモダチ アメリカの被ばく裁判」田井中雅人、 エイミー・ツジモト 著(朝日新聞出版)

2011年3月11日の東日本大震災福島第一原発事故から7年。当時、アメリカ海軍の原子力空母ロナルド・レーガンなどで救援活動「トモダチ作戦」に従事した兵士らが今、放射線被ばくの影響とみられる様々な病で苦しんでいる。

東京電力などに対して救済基金設立を求める訴訟の原告は400人を超え、現時点での死者は9人に達しているが、アメリカでの訴訟の行方はまだ見通せない。

本書は、事件直後から最前線でこの動きを追ってきた2人の日米ジャーナリストによる最新報告。

東日本大震災。発生直後、約2万4000人のアメリカ軍兵士による大規模な被災地支援活動“トモダチ作戦”が行われました。

作戦に参加した原子力空母「ロナルド・レーガン」の乗組員の一部が健康状態の悪化を訴え、012年12月東京電力などに対して損害賠償を求めてアメリカ連邦地裁に裁判を起こしました。

これに対しアメリカ国防総省は、2014年に公表した報告書において「被ばくは極めて低線量で健康被害との因果関係は認められない」として裁判が続いています。

NNNドキュメント『「放射能トモダチ作戦」米空母ロナルドレーガンで何が?』(日本テレビ・2017年10月9日)放送でも取り上げられました。

ジャーナリストの津田大介氏は、「アメリカというのは自国の国益を最優先に考える国でもあるので、日本を助けると同時に、アメリカでも大規模な原発事故が起きた場合や核戦争が起こった場合のシミュレーションのデータを取るという両面からトモダチ作戦を行っていたのでは。この上層部の判断が現場の兵士に伝わっていなかった可能性があり、この両面性の犠牲になったとも言える」とコメントしています。

思い起こしたのは水俣訴訟です。巨大システムの元で引き起こされる災害において、いつの場合もしわ寄せを被るのは現場の個人です。

システム側の責任は分散されるのに対し、現場の当事者はひとりひとりの個人として災害に向き合わなければなりません。 作家・村上春樹さんが語ったように、放送が立つべき側は「壁ではなく卵の側」であることを改めて感じます。