本屋は燃えているか

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#益田ミリ「今日の人生」

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「今日の人生」益田ミリ 著(ミシマ社)

益田ミリさんのコミックエッセイの重版が入荷しました。

いろんな「今日」を益田ミリさんが描きます。

パンがおいしかった日、札幌に行った日、なんだかむなしい日......。そんな毎日の「人生」の彩、哀しさ、うれしさを益田さんの目から見つめたものです。

エッセイはもともとミシマ社のウェブマガジンに連載されていました。

まとめたものを出版することが決まり、

作家と編集者は奥付の所に、特別な4コマ漫画を載せることにしました。

吹き出しにセリフがありません。

 

出版日より未来の日付には予想できない「人生」を思い描いて楽しんでほしい。

その願いがセリフが空白となったコマに込められているのだそうです。

 

初版にはまだ、2017年5月9日、10月22日が空白のまま残されていました。

9刷にあたる重版には、空白だった部分にセリフが掲載されて、初版とはちがうものになっています。

 

刷を重ねていくごとに、進化する仕掛けも作家と編集者が仕組んだ仕掛けなのです。

 

旧来の読書家はとまどうかもしれませんが、

常に更新される情報に慣れ親しんだ若い読者からすると、更新は当たり前の出来事なのかもしれません。

出版をとりまく状況をただ嘆くのではなく、与えられた環境の中でたくましく育つ本もあることがわかります。

次の重版ではどんな仕掛けが読者を待ち受けているのでしょうか。