「「国境なき医師団」を見に行く」いとうせいこう 著(講談社)
震災を背景に生者と死者の関係を描いた「想像ラジオ」。
著者の作家・いとうせいこうが2016年から17年にかけて、
「国境なき医師団」が活動するギリシャの難民キャンプやフィリピンのスラム地区など
4カ所を訪れルポルタージュにしました。
Yahoo!ニュースで連載された記事をまとめた本です。
もともとこの仕事は、僕が国境なき医師団(MSF)から取材された時に、MSFは僕が思っていた「戦地で活動する」だけでなく、貧困地域に行ったり、性暴力のひどい地域に啓蒙(けいもう)に出かけたり、様々な活動をしていると知ったのがきっかけ。それが世間に認知されていないのがもったいないと思い、「書かせてください」と言ったところからYahoo!での掲載が決まったんです。いとうせいこうさん、難民キャンプで経験した忘れられぬ記憶 - 朝日新聞デジタル&M
記事を書くにあたり、いとうさんは「難民の人たちを個人の物語として描こうと心がけた」といいます。
当事者の視点から見るということは、大所高所が見えにくくなることを意味します。
しかし、その人の顔や考え方、暮らしなどがより近くなります。
自分のことしか見えてこない、見ようとしない傾向が強まる中、
人の気持ちになってものを見ることの重要性を、あらためて考えさせられる本です。