「主よ 一羽の鳩のために:須賀敦子詩集」須賀敦子 著(河出書房新社)
没後20年。
今なお著者がすぐそばに生活して、はっとするような世界に私たちを導いてくれるのが
須賀敦子さんではないでしょうか。
若くしてローマやベネツィアに渡り、その土地で出会った人々を描いたエッセイは
時を経たいまでも静謐で新鮮な輝きを読む者にもたらしてくれます。
今年6月には「須賀敦子の本棚【全9巻】」の刊行が計画されています。
須賀敦子が選者となって自分の愛する作家・作品を集めたらという編集方針のコレクションです。
その中に収録される新発見原稿をあつめた詩集がベストセラーになっています。
この原稿は、プライベートな遺品として保管され長らく人の目に触れることのなかった資料を、旧知の弊社編集者が整理する中で発見したものです。和紙やタイプ用紙などに主に鉛筆で書かれており、記された日付から、須賀敦子がローマ留学中の1959年1月から12月までのものと判明しました。
まだ将来夫となるペッピーノにもコルシア書店にも出会っていない、須賀30歳の一年間。自身の内面に静かに深く問いかけつづける真摯な求道の姿が、平易でやわらかな表現の奥に感じられる美しい詩篇です。