「ヨシダナギの拾われる力」ヨシダナギ 著 (CCCメディアハウス)
「アフリカ人からフォトグラファーという職業をもらいました」
これは、私のSNSに載せている自己紹介文なのだが、本当にそう思っているのはたしかではあるが、もっと正しく言うならば、「ネットとテレビに肩書きをつけてもらいました」ということになる。なんとも喜ばしいことでございます。そのような肩書きを頂戴し、恐縮です。
フォトグラファー・ヨシダナギさんの本です。
昨年、渋谷西武で開催された写真展を見てきました。
現地の人たちだけが持つしなやかな肉体美もさることながら、
洗練された現代のファッションに通じる色使いが新鮮な写真展でした。
被写体に踏み込む思い切りの良さと、キレのいい人物表現を見ると
その技術は写真の道で仕込まれたものと思い込んでいました。
しかし、ヨシダさんの話によるとそれは間違いで、
好きでやっていたらいつのまにか写真家になってしまったというのが真相のようです。
でも、それはそれですごいことです。
写真を撮り始めた理由は、ただ「構図がうまい」と、言われたから。当時イラストレーターとしてスランプに陥っていた私にすれば、「絵はゼロから生み出さなくてはならないのに、カメラはボタンを押すだけで褒められる!」ということに猛烈に感動したのだ。より楽な方法で褒められるなら、間違いなく、私はそっちのほうがいい。
会社勤めという敷かれた道以外に歩み出す若い人たちが増えています。
(先日講演を聴きに行ったブロガーのあんちゃさんの生き方と重なります)
ヨシダさんはそのことを”拾われる"と表現しています。
アフリカの少数民族に会いに行っては、撮ってきた写真を気まぐれにブログにアップしていただけである。なんで、そんな面倒なブログを更新していたかと言うと「みんなにカッコいいアフリカ人の姿を見てもらいたい」という思いはあったものの、友人の数が片手で十分に足りてしまうため(その中には母親も含まれている)、見せる相手がいなかったからだ。
しかし、拾われるためには、拾う人たちに認められる何かを持つことが不可欠です。
さらに、拾ってもらうためには、管理された場所から外に出る必要もあります。
意志と魅力を持ち行動した結果、
ヨシダさんはフォトグラファーという自分を手に入れたといえます。
自分もやればできる。
そんな希望を与えてくれる本です。