「アンデス古代の探求 - 日本人研究者が行く最前線」大貫良夫、希有の会 編集(中央公論新社)
美術番組などで紹介される古代の遺物は、膨大な出土品の中から選りすぐられたものの一つです。
研究者たちは膨大な出土品を丁寧に掘り起こし、保存のための処理を行い記録するという気の遠くなる作業に明け暮れます。
番組制作はいわばその上前をはねるというか、いいとこ取りをすることにほかなりません。
しかし、研究者の方々は番組の無理なお願いに答えて、さまざまな便宜を図ってくれるのだそうです。
一般庶民からすると、古代史などは遠い存在です。知らなくても生活に支障がないわけです。
そんな人たちに自分たちの作業を通じて、人々が生きてきた過去を伝え、人間というものの不思議に関心を持って貰うことができる手段は番組であることを研究者たちはよく知っているのです。
ペルー北部山地、標高2300mの山上に今から3000年ほど前の大石造神殿の遺跡がある。
その名はクントゥル・ワシ。
アンデスに覇を唱えた
インカ帝国の言葉では「コンドルの館」という意味である。
ここでは1988年から2003年までの間、大規模な発掘調査と修復保存の作業が行われた。
中心となって従事したのは編者・大貫良夫(現在、東大名誉教授)が率いる日本の若手研究者たちである。
調査終了から10年余りを経た今日、クントゥル・ワシでの経験と知見を踏まえた若い研究者たちは、独自の研究を深め、ペルーの各地で発掘を重ね、新発見を通して古代
アンデス文明研究の最前線を切り開いている。
その成果はいまや世界最高の地位に達していると言える。
その研究の成果、
アンデス考古学ひいては人類史研究への貢献を、編者をはじめ8名の研究者たちに語ってもらう。聞き手は読売新聞文化部記者の清岡央。