「ハッパノミクス」トム・ウェインライト 著、 千葉敏生 翻訳(みすず書房)
丸山ゴンザレスさんの本「世界の混沌を歩くダークツーリスト」(講談社)でも紹介された麻薬ビジネスの世界を、外国人ジャーナリストの視線でルポした本。
世界の危険地帯はだいたいにおいて外務省が公開する海外安全情報で「行ったらアカン」と取材は止められます。
放送局のテレビクルーは危機管理上、現地に入れません。
それでも放送は出さなければならないということから強い需給関係が生まれます。
白羽の矢が立つのが現地の事情に詳しいフリーのジャーナリストや、独立プロダクションです。
脱北者が相次いだころの北朝鮮取材とか、イスラム国の取材で誘拐されたジャーナリストなど、危険な場所の現状を知る上で彼らの存在は欠かせないのです。
平和な日本では想像もつかないような暮らしや、アウトローな世界が海外では常識のように存在しています。
日本の常識と現地の非常識を埋める細い糸の役割を果たすのが最前線のルポルタージュです。
ハッパノミクス
麻薬カルテルと聞けば暴力を武器に勢力を拡大している印象があるかもしれない。だが、組織のボスへの取材や経済学的視点で麻薬ビジネスを分析した本書を読むと彼らの行動原理に驚かされる。
麻薬密売の世界は徹底的に合理性を追求するという。無駄に抗争せずに、必要とあれば商売敵とも手を結ぶ。密入国などの他の違法ビジネスはもちろん、野菜の栽培なども手がけ、事業の多角化に余念がない。メディアを使って情報を発信するし、慈善活動にも寄付する。成功している組織は世界的な大企業と重なる部分が多い。
著者は組織の内情を暴き、取り締まり手法を改めるべきと投げかける。無法者ではなく、したたかな企業経営者と対峙する姿勢がなければ麻薬カルテルの経営は揺るがないとの指摘はもっともだ。
トム・ウェインライト
みすず書房 2017-12-16
世界の混沌を歩く ダークツーリスト
世界中の「ヤバい場所」を巡る、いまいちばん“トガってる”旅番組『クレイジージャーニー』の丸山ゴンザレスが、世界の見方を変える旅にお連れします!
○ジャマイカ・マリファナ畑で哲学を聞く
○メキシコ・いきなり死体発見!
○ギリシャ・難民配給弁当を食す
○フィリピン・銃密造工房で観光客のフリを
○ケニア・湖に浮かぶスラム島で拘束される
○ニューヨーク・摩天楼の地下住人たち
……この旅、ヤバすぎる!
世界中の危険地帯に単身で乗り込むジャーナリスト、丸山ゴンザレスが満を持しておくる『クレイジージャーニー』裏日記!
戦争と平和、富める国の表と裏、都市の光と闇、そして生と死――、この男が飛び込んできた混沌のすべて。