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#大川史織「マーシャル、父の戦場 ある日本兵の日記をめぐる歴史実践」

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「マーシャル、父の戦場 ある日本兵の日記をめぐる歴史実践」大川史織*1 編(みずき書林)

著者の大川史織さんは30歳。

経歴を見るかぎりプロの映像制作者ではありません。

その著者が初めてのドキュメンタリー映画を発表しました。

テーマは父親です。

太平洋戦争で戦死した父親の最後を想像するために、

74歳の息子が父親が過ごした最期の地を訪れました。

父親の最後を辿る手がかりとなったのは、残された遺書。

そこには「最後カナ」という言葉が遺されていました。

個人の視点で世界を見ると、

狂乱の渦に巻き込まれていく世の中の愚かしさが伝わってきます。

誰の中にも物語があり、誰もがドキュメンタリーを撮ることができると、ある放送局員が言っていたことを思い出しました。

 

www.tarinae.com

楽シイ時モ 苦シイ時モ
オ前達ハ 互ヒニ 信ジ合 嬉シイ事 分チ合ヒ――
1945年、南洋のマーシャル諸島で多くの日本兵が餓死した。
そのなかのひとり、佐藤冨五郎が死ぬ直前まで綴った日記と遺書は、戦友の手を経て息子のもとへ渡り、73年の時を超えて解読されることになる。
そこには、住み慣れない島での戦地生活、補給路が絶たれるなかでの懸命の自給自足、そして祖国で待つ家族への思いが描かれ、混乱と葛藤のなか、自身も死へと向かう約2年間が精緻に記されていた。
〈70年以上前に・南洋で・餓死した〉日本人といまをつなぐ、〈想像力〉の歴史社会学。 

*1:1988年生まれ。神奈川県出身。高校生の春休み、マーシャル諸島で聴いた歌に心奪われる。2011年慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、3年間首都マジュロで暮らす。ドキュメンタリー映画『タリナイ』(2018)初監督。国立公文書館アジア歴史資料センター調査員(非常勤職員)。