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#山川徹「カルピスをつくった男 三島海雲」

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「カルピスをつくった男 三島海雲」山川徹 著(小学館

カルピスが誕生して99年とは本書の案内を見て初めて知りました。

数ある清涼飲料水の一つにしかすぎなくなったこのブランドは、昭和の世代にとっては特別な印象を感じさせる商品であることを改めて思い出しまいした。

お中元やお歳暮の筆頭商品であり、水玉の包装紙に包まれた茶色いガラス瓶は一般家庭にとって宝物のような存在でした。子どもたちにとっても遊びに行った友だちの家で出されたカルピスの味は記憶の一コマを彩るなつかしい思い出です。

一つの話題をきっかけに大勢の人たちの気持ちを鷲掴みしてしまう力を持つのが放送で言う"周年企画"です。

放送関係者はこうした周年企画を目を皿のようにして探していますが、ただ情報を羅列しただけでは番組にならないことも知っています。

企画のポイントは「何が言いたいのか」という中身の強さです。

本書では物語を単なる資料編纂に終わらせない発見を掘り起こしました。

それは主人公が抱いた理念です。

「国利民福は、企業は国家を富ませるだけでなく、国民を豊かに、そして幸せにしなければならないという三島が唱えた経営理念」

目先の利益ではなく遠い未来を見据えて生き抜いた人の持つ理念は、時を経ても陳腐化することはありません。

この理念がロングセラーの強さを支える隠し味なのかもしれません。