週刊東洋経済2018年8月11日号BOOKS&TRENDSで紹介された本です。
「政治を科学することは可能か」
安倍内閣の支持率は、2015年の安保法制論争、2017年の森友・加計問題で大きく落ち込んだが、その後回復していく。
これは戦後の歴代内閣の、発足当初が最も高く、徐々に低迷していくというパターンからは大きくはずれる、異例の現象である。
なぜ安倍内閣の支持率は回復するのか。支持率の下落は保守層・リベラル層のどちらの離反によるものなのか。 あるいは一般に自明の事柄として語られる「復興支援の正しさ」の根拠とは何だろうか。災害とはどこまでが「不運」によるもので、どこからが「不正義」によるものだろうか。
テレビなどでは印象論で語られることが多いこういった事象を、国際的に認められる水準の「科学としての政治学」で分析すると何が見えてくるか。これらのメカニズムの解明こそ、現代の日本政治を理解する上で、一つの重要な鍵を提供する、と著者は指摘する。
世論調査に実験的要素を加えた「サーベイ実験」という新しい手法による近年の成果を中心に、さまざまな問題から民主主義の根幹に迫る本書は、「読んで面白い」最新政治学の入門書でもあり、政治学的に言えば「規範理論」と「経験的研究」とを架橋する画期的な試みでもある。
「日本サッカー辛航記」
歴史を繙けば、監督解任や選手間の内紛、それにともなう無責任な報道は何度も繰り返されてきた。
「名勝負の羅列だけがサッカー史ではない。サッカーもまた映画や演劇のように、内外の不特定多数を巻き込む運動や装置として生きてきたのだ」と著者は説く。
「日本社会」において「サッカー」とはいったい何だったのか。
一九二一年の第一回「天皇杯」から、二〇一八年のロシアワールドカップ出場までおおよそ一世紀を、貴重な文献と著者自身の視点で振り返る。
「面従腹背」
安倍晋三首相と親密な関係といわれる学校法人加計学園が、
国家戦略特区に獣医学部を新設した問題で、
官僚トップの事務次官を務めた著者がなぜ
「総理の意向があった」と記された文書の存在を認めたのか。
「公正・公平であるべき行政が歪められた」として、
安倍政権下で起きた加計学園問題をはじめ「権力私物化」の構造を糾弾する。
そして、「道徳の教科化」や「教育勅語」の復活など、
安倍政権が進める教育政策に警鐘を鳴らす。
さらに、文部科学省という組織の中で、「面従腹背」しながら
行政の進むべき方向を探し続けた38年間の軌跡を振り返る。