「宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ」
大貫美鈴 著(ダイヤモンド社)
週刊東洋経済(2018.7.14)は「すごいベンチャー100」。
いま有望視される日本のベンチャー企業の総覧といった特集企画で紙面が埋め尽くされています。
記事のトップに掲載されていた「インフォステラ」という会社が印象に残りました。
宇宙ビジネスに挑む小さな会社ですが、宇宙ロケットを打ち上げたりといった派手な仕事ではありません。
この会社が目をつけたのは通信アンテナです。
宇宙衛星は単独でミッションを行うわけではありません。
リモコンのように操縦する責任者が遠隔操作を行っています。
そのために必要なのが衛星通信アンテナで、世界中に数多くのアンテナが立てられています。
しかし困ったことに、地球の周囲を高速で旋回する衛星がアンテナの上空に現れるのは短時間。
アンテナの多くは手持ちぶさたに遊んでいるといわれます。
そこに目をつけたのが東京・渋谷に事務所を構える「インフォステラ」。
創立したのは倉原直美CEO。子ども時代から宇宙飛行士をあこがれたサイエンス・ウーマンです。
2010年、博士研究員として東京大学のプロジェクトで衛星と通信するシステムを担当したとき、頭の中にアイデアがひらめきました。
「衛星が通過する瞬間が勝負。その時間は一日40分。世界中のアンテナが使えれば」と考えた倉橋さんは、世界中の衛星通信アンテナを時間貸しするシェアリングサービスを思いついたといいます。
手の届かなかった宇宙が、アイデア一つで手の届くところまで近づく。
加速する宇宙ビジネスは、世界中の若者たちに希望を与える未開拓のフロンティアであることが印象に残りました。