「ぼくらの家。 9つの住宅、9つの物語」光嶋裕介 著(世界文化社)
良い建築家の建てた家は"背骨"のようなものがあります。
漫然と過ごせて居心地がいいだけではない、世界観や哲学のようなものを住人は受けて暮らすことになるのです。
その正体とは何か。
先日NHKで再放送されたドキュメンタリー「建築家の家」を見て改めて感じました。
番組で紹介されたのは建築家・清家清さんと石山修武さんの自宅です。
清家清さんの自宅は世田谷にある「私の家」と呼ばれる小さな家。今私たちが住んでいる間取りの基礎を作ったと言われる伝説の住宅設計です。間仕切りを取り払った設計は狭い空間を感じさせないだけでなく、家族の絆まで配慮した設計思想が込められていたことが、改めてわかりました。また、鉄の素材にこだわった異色の建築家石山修武さんの家づくりを見ると、へんてこりんな建築に迷惑を感じながらも暖かく見守る石山一家の暖かさに圧倒されました。
身の丈にあった家に住むということは、自分の思いや欲望を叶えてくれる家に住むことではなく、自分がそれまで気がつかなかった隠れた自分を引き出してくれる家に出会うことなのかもしれません。そしてそれは施主の生き方、考え方まで咀嚼して設計図に落とし込む力を持った建築家に出会うことなのではないかと思います。