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#広中一成「牟田口廉也 「愚将」はいかにして生み出されたのか」

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牟田口廉也 「愚将」はいかにして生み出されたのか」広中一成 著(講談社

負け戦の組織にはこんな人が必ずいる

組織で仕事をしていると、たまに負け戦というのか、成果が絶望的に期待できないプロジェクトに巻き込まれることがあります。そんなプロジェクトには必ずと言っていいほど「無責任」な上司が居て、ヒトモノカネのリソースが不足しているのにもかかわらず、進軍ラッパだけが鳴り響く仕事場はよく「インパール作戦」と呼ばれました。その語源となったのが本書の主人公・牟田口廣也です。

 

インパール作戦の経緯は「失敗の本質」で分析されていますが、今の感覚からするとまさに「昭和的」。愚将の存在を許した環境は少し前の体育会系のメンタリティに似ています。

1中 今日すぐに出発する(自身の身に砲火が近づいたので慌ててトンズラ)
2左 兵力の温存を図っているとしか考えられない(兵站を固める師団長へ叱責)
3遊 腹を切ってでも佐藤師団長を諌める者は居ないのか(抗命した部下を批判)
4一 陛下へのお詫びに自決したい(もちろん口先だけで天寿を全うした)
5三 私のせいではなく、部下の無能さのせいで失敗した(インパール作戦失敗について)
6右 足もやられたら口で噛みついて行け(訓話を延々続けて栄養失調の部下は卒倒)
7捕 そんなものは病気じゃない(マラリアと下痢について)
8二 一度、教育総監をやってみたい(さすがに周囲に失笑される)
9投 貴様等のこのざまは何だ。それでも帝国陸軍か!(傷病兵に対して)

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まさにブラック。

でも怖いのは、牟田口廉也の行為を正当化する意見が今も少なくないということです。

根拠のない自信に基づいて作戦を続ける組織。独善的な責任者の存在に、否と言えない従業員がこの国を支える構図は今も昔も変わらないことがわかります。