「気候カジノ 経済学から見た地球温暖化問題の最適解」ウィリアム・ノードハウス 著(日経BP社)
最近ニュースで目にすることが少なくなった地球温暖化問題。
昨年6月トランプ政権が気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」から離脱すると表明して大騒ぎになりました。
温暖化を巡っては、「温暖化は生態系に悪影響」という説と「そもそも気温は上昇していない」という説との論争が続き、どちらが正しいのか決着がついていません。 また、そもそも「パリ協定」は政治文書。科学的な決着とは分けて考えるべきだというアメリカの考えが騒ぎに輪をかけました。
日本列島に住む私たちにしてみれば、大型台風による被害や、夏のゲリラ豪雨、記録的な猛暑や冬の豪雪など、最近の気候に関心を抱かざるを得ません。
そこんところ、ぶっちゃけどう考えたらいいのか。
そんな疑問に気象の専門家ではない経済学者が答えた本です。
経済活動があれば当然気候は変動するというシンプルな考え方に立って、この問題をルーレットゲームに例えています。
経済活動はコイン。コインを賭けてルーレットを回すとルーレット上の数字が結果によって変化する。つまり気候の大変動も起こりうという考え方です。
丸腰で危険な賭に手を出すのではなく、負けた時の保険を用意した上でゲームに参加しろという指摘はわかりやすく納得できます。
自動車を運転する際、自動車保険に入っていなかったらどうなるか。
保険はリスクに備えるためのものです。
経済活動が引き起こす負の課題に備えておくことが大切です。
温暖化問題は、ニュースになるような目立った論点がないだけで決着したわけではありません。
気象にまつわる社会問題が発生したら途端に注目を集めるテーマです。
「私は絶対転ばない。だから杖など必要もないし、転ぶかもしれないと悩んでいる他人のことなんてかまえな気持ちなんてどうでもいい」
そんな考え方に対する想像力を養う一冊です。
「地球温暖化問題は陰謀による捏造(ねつぞう)」でもなければ「気候のハルマゲドンへ世界が猛進している」のでもないと断言する著者のバランス感覚と誠実さが窺(うかが)われる一冊。(慶応大学教授 藤田康範)
読者の手応えはどうでしょうか。
一般向けのビジネス書ですが、テーマがテーマだけに、それなりの読むパワーが求められるようです。