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#市来広一郎「熱海の奇跡」

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「熱海の奇跡」市来広一郎 著(東洋経済新報社

大きな組織にいるうちに、組織の論理に染まってしまうことはよくあります。うまく回っているうちはそれでもいいのですが、回らなくなると、組織の常識が世間の非常識になってしまい、その常識が再生のブレーキとなることがよくあります。最悪なのは中にいる人が誰も改善できなくなることです。

熱海に来た旅行客から観光協会にクレームがあった。客が熱海の見どころを尋ねた際、タクシー運転手、ホテルの従業員、飲食店店主の三者とも「何もない」と答えた…というエピソードが印象的。

そんな組織を救うのはヒーローでもない普通の人。おかしいと思ったことをコツコツ改善しながら共感する人を増やしていく黒子のような存在なのかもしれません。

長年暮らし続けて街の良さも見えなくなり、不景気を卑下する地元の人達の意識改革が最も重要と著者が痛感したという。一度は沈んだ温泉街に、気づかれずに隠れていた魅力を引きだすことで街の人々に活気をもたらし、熱海を盛り上げる著者の熱意と実行力が素晴らしい。

「小さな取り組みから始めたこと、補助金に頼らず収益性を重視していることは、活動を継続するために重要」と言う指摘は的を得た提言です。