本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

#ダン・アリエリー「アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-」

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「アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-」ダン アリエリー 著、櫻井祐子 訳(早川書房

岡目八目と言うことわざがあります。

他人の囲碁をそばで見ていると、対局者よりも冷静に手が読めることから生まれたことわざで、第三者のほうが、物事の是非得失を当事者以上に判断できるということだとwikiに載っています。

勝負に熱中して我を忘れているプレイヤーの振る舞いこそが「行動経済学」を学ぶ生きた教材といえます。

だいたい悪いパターンにはまり込むのは、自分自身が「根拠なき自信」を抱いてしまうことがきっかけです。

焦って行動に移る前に一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせることを勧められたりするのも行動経済学を知ることで理解が進みます。

慌てん坊で損ばかりしていると自覚する人には一読をお勧めするのが行動経済学の入門書です。

 

 

#池谷敏郎「人生は「胃」で決まる! 胃弱のトリセツ」

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「人生は「胃」で決まる! 胃弱のトリセツ」池谷敏郎 著(毎日新聞出版

ものを売るには不安につけ込むのが一番と言います。

なるほど言われてみれば、健康やお金、美容といった分野は次々と新しい情報が発信され続けています。

しかし、中には明らかに眉唾情報と言うものも見られます。おかしいと思っていても信じ込んでしまうと抜け出すのも一苦労です。

おかしな情報に引っかからないようにするためには、論拠が確かなものを選ぶようにすること。余裕があれば類焼を見比べるなどして明らかな差がないか確かめることです。

健康関連の本については極端な情報は鵜呑みにしないことが肝心です。

本書は健康法といっても予防の観点で書かれた健康法です。極端な方法だに頼るのではなくちょっとしたことから始められる提案が散りばめられているので害にならない読むクスリです。

 

#川島蓉子 #糸井重里「すいません、ほぼ日の経営。」

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「すいません、ほぼ日の経営。」川島蓉子、糸井重里 著(日経BP社)

伝説のコピーライターとして時代を牽引した糸井重里さん。時代の先を読んでネットの事業に乗り出して立ち上げたのが「ほぼ日」でした。ネットを通じて商品を売るのが事業なのですが、サイトを訪問してわかるように、商品そのものを売ると言う印象はありません。どちらかと言うとライフスタイルを紹介する雑誌を眺めるような、情報に力を入れたコミュニティサイトのような印象すらかんじます。

著者の川島さんは「ブランドのデザイン」にこだわるジャーナリストです。ものを安く売ることよりもブランドとしての品格を消費者が評価する企業が消費者の信頼を勝ち取るという姿勢で活動を続けてきました。

この本の面白さは、ライフスタイルとブランドと言う切り口でお互いの考え方をあぶり出すようなジャズに例えたらセッション。ライブ感覚を感じることです。

ほぼ日の紙面上に掲載されるコラムや、自身が出演するテレビ番組などでは「のほほーん」とした語り口で敵を作らせない糸井さんが経営者の顔を見せるインタビューなど見どころたっぷり。あの糸井さんにこんな冷酷な面もあったのか。と気づくだけでも読んだ価値がある本です。※冷酷なと言ってもブラックな冷酷さではありません。人に見せたことにないしたたかな計算をする糸井さんがいたと言う発見です。念のため。だから最後に糸井さんは「表題のほぼ日の経営けの頭に「すいません、」を書き加えてほしい」と言っていたのです。

 

 

#営業は自分の「特別」を売りなさい

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「営業は自分の「特別」を売りなさい」トーマス・ラッポルト 著(飛鳥新社

営業のステージは6まであると著者は言います。
最初のうちはガツガツ売るという、典型的な営業のイメージです。
売るためには夜討ち朝駆け、人が厭わないこと。
つまり人が嫌がることもためらわずにやることで売り上げに繋げるというイメージです。
でもこれは自分を犠牲にしてまで商売に手を染めることです。
意のそぐわないことをやり続けることはストレスを抱えることになります。
ストレスを抱えたまま走り続けると無理が体に出てきます。
その結果どうなるかを田中圭一さんは「うつぬけ」で書きました。

 

そうならないためにどうしたらいいか。
著者が提案するのはステージを上がること。
つまり、売り込まなくても、人の役に立ちながら、選んでもらえる技術を身に付けることです。
読んで見て気づいたのは、興味のあることを継続するというシンプルな法則です。
自分自身がやりたいことをやる。
つまり専門性を高めることで自分のプランド。つまり価値を高めることが大切なのです。
自分という資産を磨き上げ、人が頼って来ざるを得ない存在になることです。
これは堀江貴文や落合陽一といったトップランナーが言っていることと同じです。

信用と言う名前の資産を作ることです。
自由な時間と十分な収入を得るためにはどんなに狭くてもいいから自分の土俵で戦うこと。

営業と言う仕事も同じです。

堀江貴文や落合陽一といったトップランナーたちが語り続けることと同じ。自分の好きを極めること。もしくは仕事を自分の土俵に引きずりこむことが結果として自分を救うことにつながるのです。

#中島恵「日本の「中国人」社会」

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「日本の「中国人」社会」中島恵 著(日本経済新聞出版社

閉鎖された社会は周囲から見えなくなります。そこにいるのに周りから見えないというのは物語の中の出来事ではありません。閉鎖社会が生まれる理由は宗教、人種、政治、経済など様々ですが、「何をしているのかわからない」という不安は、お互いにとって大きな損失につながります。

本書は今や鳥取県の人口五十九万人に相当するくらい日本に住む中国人に焦点を当てたルポルタージュ

日本経済新聞社というメディアの持つ視点に説得力があります。

 

#荻原通弘 #木村英昭「赤羽駅前ピンクチラシ;性風俗の地域史」

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赤羽駅前ピンクチラシ;性風俗の地域史」荻原通弘、木村英昭 著(彩流社

赤羽周辺の住民の皆さんからは「なんてことをしてくれるんだ」「地下が下がるじゃないか」「忘れかけてたのに」とクレームが殺到するかもしれない。と思いつつもやっぱり面白いと著者の着眼と収集にかける熱意に脱帽した本。

今は絶滅状態ですが、テレホンカードの全盛期、川崎や渋谷、新宿などのアブナイ地域の電話ボックスにメモのような怪しげなチラシが貼り付けられている景色を目にしました。大抵の人はゴミのように無視するのですが結構持ち帰られた形跡があったので、特定の地域はそれなりの世界が広がり、不可視の文化が発達していたのでしょう。

当時ですらゴミのように扱われていたのですから価値はないものと思っていましたが、ゴミも数が集まれば価値を生み出すのです。

多分時間がたてばたつほど資料化した価値が高まる本かもしれません。

 

 

#村上隆「芸術起業論」

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「芸術起業論」村上隆 著(幻冬舎

拝金主義と読み間違えそうな表題です。さらに著者の創作活動を看過すると精神主義こそが正しい道だと思えてきますが、その根底をゆさぶる提言には説得力があります。

日本の美術界をディスっているようで、実は愛情あふれる究極の応援本。ネット上に展開する書評を読むだけでも、表現を志す人を刺激する内容で満ちています。

芸術は想像力をふくらませる「商売」であると言い切る著者は、商売を成立させるためのあらゆる努力を惜しまないから嫌みでない。「心の本音を探索し、心の扉を開け放つそういうリスクの高い行為をしているのが芸術家。」「僕の欲望は「生きていることが実感できない」をなんとかしたい、なのです。」が熱くていい。世界のルールとは「世界で唯一の自分を発見し、その核心を歴史と相対化させつつ、発表すること」。自分もプレゼン力を身に付けていきたい。

 

アートは、文化的、歴史的な側面が注目されがちだが、決して社会的な要素を排除してはならない。ゴールと手段を分けて考える日本のアート・カルチャーに一石を投じる書。ただし、現在のベーシックインカム的な発想ができると、西洋芸術史でいうパトロンの存在がだれしも持て始める。とするならば、この芸術起業の文脈も変わり、さらには美術業界そのものの仕組みの変わりそうである。 

 

美術の世界の価値は、「その作品から、歴史が展開するか」で決まります。日本の頼るべき資産は技術で、欧米の頼るべき資産はアイデアなのです。ビル・ゲイツは、ダ・ビンチの作品を持っています。栄耀栄華を極めた経営者には、ほとんどの問題はお金で解決できるものなのでしょう。人の感情も分かったような気になる・・・そんな時にこそ人間は芸術が気になるようです。なぜならば「心」こそ、そして「心」の内実こそ、蜃気楼のように手に入れたと思った途端逃げてゆくものだ、ということを彼らは知っているからです。等々。若者必読の書。