本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

地頭力を鍛える

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地頭力を鍛える」細谷功 著(東洋経済新報社) 

地頭力」ブームを巻き起こしたベストセラーが待望の電子書籍化!!

「日本全国に電柱は何本あるか?」といった例題やその解答例から「フェルミ推定」のプロセスを紹介しつつ、「好奇心」「論理的思考力」「直感力」という地頭力のベースとそれらのベースの上に重なる仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力の3つの構成要素とその鍛え方を解説。

「問題解決」を必要とする業務に携わるビジネスパーソンはもちろんのこと、本当の意味での創造的な「考える力」を身につけたいすべての人に贈る、知的能力トレーニングブック。

フェルミ推定*1を解くことを通じて思考の効率を高める"自己啓発書"です。

放送局では、ふだん想像も付かないような世の中の大問題に直面することは珍しくありません。担当者は放送日までに視聴者に対して説得力のある番組をつくらなくてはならないわけですから、本書でいう"地頭"を強くする努力が求められます。

幸いなことに、放送は共同作業であることから、問題が大きくなればなるほどその番組を支えるスタッフは増員されます。一人で思い悩むことはないのです。ここで大切なのは持論にこだわらず議論を受け入れ、情報を開示するという姿勢です。どんなに苦しくても放送は出ます。「三人寄れば文殊の知恵」という解決策が生まれなかったことはありません。

地頭力を鍛える

地頭力を鍛える

 

 

*1:フェルミすいてい、英: Fermi estimate)とは、実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算することを指す。フェルミ推定で特に知られているものは、「アメリカのシカゴには何人(なんにん)のピアノの調律師がいるか?」を推定するものである。これはフェルミ自身がシカゴ大学の学生に対して出題したとされている[6]。80年代90年代のアメリカ企業の採用活動でよく行われていた。

ブラック・フラッグス:「イスラム国」台頭の軌跡

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ブラック・フラッグス:「イスラム国」台頭の軌跡」ジョビー・ウォリック 著(白水社

ザルカウィとその後継者を中心に、ISが生まれた背景から現在に至るまでを詳細に描いたノンフィクションである。街のチンピラがアルカイダとつながって国際的なテロ組織を主導するようになった背景には何があったのか。イラクフセイン政権打倒に走った米国失策の誘因とは――。200人を超える関係者らの生々しい証言と精緻な裏づけにより構成され、丁寧な人物描写と複雑にからみ合った相関関係から、組織の構造や事件・事象の全体像を鮮やかに浮かび上がらせる。
中東取材20年のジャーナリストが独自の人脈を駆使し、スパイ小説さながらの手に汗握る筆致でISの変遷と拡大の背景を描き切った、調査報道の白眉。

イスラム国の扱われ方に隔世の感を感じます。事件当初、テレビは連日連夜のようにイスラム国を取り上げ、テロとの戦いという言葉を聞かない日はありませんでした。イスラム国が武力制圧されてしまった今、日本にいるとあの事件は解決済みとなった過去の話題のようです。組織が壊滅されたからといって事件が解決したわけではありません。人々を極端な方向に誘った原因を理解しないと、第二第三の事件が起きる危険は残されています。

本書は、ザルカウィに絞ってISの変遷と拡大の動きを追った記録です。人に絞ったことにより出来事が"明日はわが身"のように、身近なものとして迫ってきます。

修羅場を数多く経験してきた欧米社会では、数多くの当事者証言を積み上げることで真実に肉薄する精神風土があります。検証とはジグソーパズルを組み立てることそのものです。

ブラック・フラッグス(上):「イスラム国」台頭の軌跡

ブラック・フラッグス(上):「イスラム国」台頭の軌跡

 

 

銀翼のアルチザン 中島飛行機技師長・小山悌物語

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「銀翼のアルチザン 中島飛行機技師長・小山悌物語」長島芳明 著(KADOKAWA) 

SUBARU安全神話の源流となった男の物語。「疾風」をテストした米国空軍は、その性能に驚愕した。中島飛行機という小さな飛行機会社のエースとして、「九七式」「隼」「疾風」などの戦闘機を開発した天才技師・小山悌。終戦間際は「富嶽*1」と呼ばれる極秘計画に取り組んでいた。小山が富嶽に込めた願いとは?

放送局における技術職は新しい技術の開発の話になると目が輝き出します。新しい技術の開発と世の中の動きが良い方向に向かっているうちはいいのですが、両者の動きがもつれ出すと事はややこしい方向に向かいます。最近気になったのは顔認証。テロリストの識別も顔認証の技術で可能なるのだそうです。ここにも放送の基礎研究が使われています。扱い方を一歩誤れば人々のプライバシーを監視する武器になりかねません。しかし、技術者は「それは別な話」と研究の手を緩めません。軍事技術と科学者の倫理が話題となりましたが、技術者もおなじことです。ビジネス書としても読める本ですが、8月の季節、様々な視点から読み込みたい評伝です。 

*1:第二次世界大戦中に日本軍が計画した、アメリカのB-29を超える6発の超大型戦略爆撃機である。名は富士山の別名にちなむ。

足の下のステキな床

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「足の下のステキな床」今井晶子、奥川純一、西村依莉 著(グラフィック社)

古い建物が消えていくと同時に、ステキな床もどんどん消えて行きます。
昭和ノスタルジーの最後の記憶になるやもしれぬ、ステキな床の数々をお楽しみください。

ふだん何気なく見下ろす床のデザイン。最近は室内を明るくすることで集客力を上げるため、照明を跳ね返すような白い床が増えています。柄に覆われた床に出会う機会も減ってきた気がします。本書によると1970年代を中心に華やかな柄で床を飾るブームがおきていて、店や施設はアールヌーボー、ジオメトリック、ハニカム、花柄、モザイクタイルなど競うように床を飾っていたのだそうです。消えゆく床のデザインを追い求め3人の著者が日本全国から収集した写真集です。

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掲載された床は189点。変わった物さがしが目的ではなく、その場所になじんだステキな床を再発見するというのがこの本の狙いのようです。風雪に耐えて摩耗や汚れはあるものの味のある質感の床が印象的です。

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床は建物の中で一番劣化が早い部分です。著者はあえて靴と一緒に写すことで床のデザインであることを示しています。はからずも靴が写り込むことで、生活感と安心感が漂ってくるような気がする写真集になりました。

ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技

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「ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技」木村尚敬 著(日本経済新聞出版社

-社長を操ってリストラを成功に導いた部長
-意思決定を遅らせる「空中ハンコ」
-結果を出した、マスターオブ「アイ・ドント・ノウ」
-部門間の「相互不可侵条約」がコミュニケーションを阻害する
-前向きな「CND(調整・根回し・段取り)」とは
-「男気貯金」を貯めろ
-無血革命を成功させたミドル
-「正しい質問」で相手を操れ
-情報を遮断する「五合目社員」「粘土層」とは
-「大本営オペレーション」が失敗する理由
-人を操る3つの力とは
-自分がKYな存在になれるか
-他人のスキルをパクってしまえ
-社内諜報戦を勝ち抜く人脈とは
-「誰だお前?」という冷たい視線に耐える
-親しみやすさと敬意は両立しない
-異性関係、お金、名声……己の中の下世話な欲望をコントロールする
-いけすかない若造が、バンバン物事を決められる理由
-部下のダメだしに耐えろ
-無礼講にしたところで本音は出てこない
-ダークサイド・スキルは退職後も有効

まっとうなビジネス書は置いても売れない書店です。ビジネスとは縁の無い生活を送っている人が多いことから、ひねった企画を掘り当てないことにはビジネス書の棚は埋まりません。タイトルが人目を惹いたのがこの本。書評を確認すると人間の欲望が丸出しの事例が並んでいます。「裏技」とは奇襲戦法のようなもので二度と同じ手は使えません。知っている人がいたらその裏をかかれるわけなので、裏技とタイトルに描いた時点で裏技は成立しません。なのでタイトルからして確信犯です。サラリーマンの悲しい性を描いた漫画家・東海林さだおさんのネタ本にぴったりな気がします。さまざまな場面から面白いコント番組が生まれるのかも知れません。

2017年上半期ベストセラー(新書)

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ダ・ヴィンチが発表した2017年上半期ベストセラー(新書)によると、ケント・ギルバート著 「儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇」が首位を独走中とのことです。この本屋では逆にあまり動きません。書かれていることが事実だと鵜呑みする前に、現場を見に行って確かめる人が多いからかもしれません。

彼が謝らなかった理由は、自分の非を認めて許してもらえる甘い社会ではないことを体で知ってるからではないだろうか?謝れば負けを認めることになり、そうすれば公安(警察)に突き出されることになる。

アマゾンレビューに掲載されているように、かの国で生きていくことの過酷さは日本の比ではありません。儒教の基盤はあるかもしれませんが、決定的なのは貧富の格差であり、意識の違いです。中国ロケ専門のプロダクションの人は、取材交渉の大変さを語っていました。

ddnavi.com

1位『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇(講談社+α)』(ケント・ギルバート/講談社
2位『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱(中公新書)』(呉座勇一/中央公論新社
3位『それでもこの世は悪くなかった (文春新書)』(佐藤愛子/文藝春秋
4位『サイコパス(文春新書)』(中野信子/文藝春秋
5位『言ってはいけない 残酷すぎる真実(新潮新書)』(橘 玲/新潮社)
6位『雑弾力(PHP新書)』(百田尚樹/PHP研究所
7位『テレビじゃ言えない(小学館新書)』 (ビートたけし/小学館
8位『怖いほど運が向いてくる! 四柱推命(青春新書プレイブックス)』(水晶玉子/青春出版)
9位『本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方(SB新書) 』(堀江貴文/SBクリエイティブ
10位『すべての教育は「洗脳」である 21世紀の脱・学校論 (光文社新書)』(堀江貴文/光文社)

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新世紀ゾンビ論: ゾンビとは、あなたであり、わたしである

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「新世紀ゾンビ論: ゾンビとは、あなたであり、わたしである」藤田直哉*1著(筑摩書房

私は、ゾンビは希望だと考えています。――本文より

映画、ゲーム、マンガ、アニメなど、いたるところに立ち現れ、変容し、増殖し続けるゾンビ。
腐敗し動作が緩慢なゾンビから、俊敏で理性のあるゾンビ、そして、キュートで共存可能な美少女ゾンビへ! こうした変容は、はたして何を意味しているのか?
ゾンビものの映画に見て取れる、敵の襲来に備え、巨大な防御壁を築き、
少ない資源でサバイバルするという〈ゾンビ・フォーマット〉と、リアルな政治状況との関係とは?
いったいなぜ、「私たちがゾンビだ! 」と言い得るのか?
現代日本のカルチャー・シーンに登場した、美少女ゾンビたち――、その可能性の中心とは?1983年生まれのSF・文芸評論家、藤田直哉が7年の歳月をかけて完成させた、まったく新しいゾンビ論にして、現代社会論の誕生!

アニメや映画愛好家*2ならゾンビに遭遇した経験があると思います。敵役として見過ごしていたゾンビに制作者たちがどのような意図を込めていたのか注目すると、ゾンビという存在を通じて見える世界が変わってきます。

過去を現在化した存在である「幽霊」は、時間を超越できたり、その場で起きなかったことを表現できる演劇との相性が良い

興味深いのは著者のツイートです。コンテンツの評論にとどまらず日本人の死生観や民俗信仰など事実の収集と分析に圧倒されます。お盆という絶好の機会に手に取っていただきたい本です。

 

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新世紀ゾンビ論: ゾンビとは、あなたであり、わたしである (単行本)

新世紀ゾンビ論: ゾンビとは、あなたであり、わたしである (単行本)

 

 

*1:SF・文芸評論家 博士(学術)二松学舎大学和光大学非常勤講師。 クラウドファンディングご支援ありがとうございました。 編著『東日本大震災後文学論』『地域アート』、単著『新世紀ゾンビ論』『虚構内存在』『シン・ゴジラ論』

*2:ウォーキング・デッド』『進撃の巨人』『ワールド・ウォーZ』『桐島、部活やめるってよ』『バイオハザード』『さんかれあ』『デッドアイランド』『ショーン・オブ・ザ・デッド』『アイアムアヒーロー』『屍者の帝国』『魔法少女まどか☆マギカ』『メタルギアソリッド』『ぼくのゾンビ・ライフ』『ウォーム・ボディーズ』『ぞんびだいすき』『がっこうぐらし! 』『セーラーゾンビAKB48