本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

拡張するテレビ

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「拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来 ―」境治 著(宣伝会議

目次
序章 テレビは拡張している
第1章 SVOD二年目、第二幕
第2章 テレビ番組のネット配信
第3章 テレビ視聴の変化と新しい視聴計測による広告業界の変化
第4章 二度目の動画広告元年
第5章 新しい映像配信サービスはテレビに取って代わるのか?
第6章 ソーシャルテレビ再び
第7章 今後のテレビビジネスと映像コンテンツ産業
第8章 広告コミュニケーションの新しい姿

テレビ局の視点に立った本というより、広告を作る側、広告を打つ側からテレビというメディアの将来を占う本のようです。第5章 新しい映像配信サービスはテレビに取って代わるのか?というテーマが示すように、テレビ目線で業界のあり方をトレースする姿勢が、やや時代に乗り切れていない感じがします。多分想定する読者層は、テレビという時代に育ってきた年配の経営層なのかもしれません。 

 

123人の家 vol.2

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「123人の家 vol.2」日販アイ・ピー・エス

f:id:tanazashi:20170721112132j:plainインテリアショップ「アクタス」で働く社員の家を撮影・編集した「123人の家」待望の新刊です。

インテリア雑誌を眺めていると、こんな暮らしをしてみたい気分になります。プロのインテリアコーディネーターが仕立てた室内を、プロのカメラマンが撮影した写真は理想の住まいを映し出す夢です。しかし、一分の隙も無い室内はいざ住んでみると意外に窮屈なものかもしれません。f:id:tanazashi:20170721111615p:plain

では、人が実際に暮らしている室内を探検しよう。みんなが頭に浮かべていた願望を実現したのがこの写真集です。センスのいい暮らしにあこがれるなら、センスのいい人の暮らしを参考にするのが早道です。それも実際に人が暮らしているものが一番です。

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どんな什器を手に入れて、それをどのように配置すれば空間はどのように見えるのか。住んでいる人が知恵を絞って作り上げた”お宅訪問本”です。限られた予算をやり繰りして作り上げた室内レイアウトは身近に感じられます。

本書で新しい試みとして提案されているのが、印刷媒体にとどまらない情報提供のあり方です。 三次元の情報を上手にパッケージ化されていると感心します。これからの出版のあり方を予感させるような本かもしれません。

youtu.be

写真だけではどうしても伝えきれないお宅の空気感を感じる工夫として360度の動画を撮影しました。無料ARソフトをダウンロードし、お気に入りのお宅のページにスマートフォンをかざすとあなたがリビングダイニングの中心にいて360度ぐるっと見渡した景色が、気持ちのいい音楽と共にお楽しみいただけます。

 

123人の家 vol.2 | おすすめ書籍・本 | デザイン情報サイト[JDN] 

123人の家 vol.2

123人の家 vol.2

 

 

コンプレックス文化論

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「コンプレックス文化論」武田砂鉄 著(文藝春秋

文化はコンプレックスから生まれる。
天然パーマ、背が低い、下戸、ハゲ、一重(ひとえ)、遅刻、実家暮らし、親が金持ち……これまで腰を据えて熟考されることのなかった10個のコンプレックスに向き合い、数々の文献を読み解きながらしつこく考察した評論集。

どうでもいいことを真剣に考えることは、複雑な現代社会を大過なく生き延びるための処方箋なのかもしれません。 誰もが抱く悩みに向き合っている人の姿勢を遠目で見るだけで、この世界に生きていていいんだという気になれるからです。本書の目の付け所やこだわり方は、放送をつくる立場の者にとって、ある意味「教科書」にあたります。補充発注を迫られそうな人気です。

コンプレックス文化論

コンプレックス文化論

 

 

美術展ガイド誌"夏の陣"

その体験は、まだ見ぬ世界への扉になる・・・夏休みを近場で過ごしたい人には美術館がぴったり。常設展とは別に著名な絵画を集めた特別展で個性を競います。出版各社も、今年後半の展覧会をまとめたガイド企画を打ち出して、アート鑑賞を助けます。作家の思いが詰まった一枚を見に出かけてみませんか。

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日経おとなのOFF 2017年 08 月号

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人気の波が押し寄せている北斎の2大展覧会に、史上最大の運慶展、京都国立博物館41年ぶりに国宝200件以上が出展される渾身の国宝展。この夏以降、私たちを圧倒する展覧会が続々開幕。行列必死の熱い内容をいち早くチェック!

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毎年、年の瀬に発売される”美術展特集企画”は抜群の売れ行きを示す「日経おとなのo8ff」。夏に発売される本号では、秋冬の展覧会を重点特集してます。付録のスケジュール表が目当ての読者もかなり多くようです。 

日経おとなのOFF 2017年 08 月号

日経おとなのOFF 2017年 08 月号

 

 

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美術展ぴあ 2017秋冬

●全120展
美術展スケジュール 2017秋冬-2018春

[特集]
2017秋冬-2018春
大注目の美術展7

①日本への憧れ全開!
ゴッホ展 巡りゆく日本の夢
②気付いた瞬間、恐怖が始まる…
「怖い絵」展
③イタリア2大巨匠の"素顔"、ここに競演
レオナルド×ミケランジェロ
④世界有数のコレクションが大集合!
ボストン美術館の至宝展-東西の名品、珠玉のコレクション
⑤浮世絵の技術革新者 春信の優美なる「錦絵」
ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信
⑥史上最高の天才仏師 その偉才を観よ!
興福寺中金堂再建記念特別展 運慶
⑦日本の美の神髄を知る
京都国立博物館開館120周年記念 特別展覧会「国宝」

[ガイド]
全国美術展ガイド 2017秋冬-2018春
・西洋美術 ・日本美術*東洋 ・現代アートほか

●全国52館 美術館カレンダー2017秋冬-2018春
●全国17館 美術館データ

データベースとしての機能に特化したのが「美術展ぴあ」大小様々の美術展120が紹介されています。「絶対見るべき美術展」といわれても全国120の展覧会をはしごするのもたいへんです。  

 

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和楽8月号

(大特集)驚異の60ページ越え!
若冲も! 北斎も! 永徳も!
日本美術は世界最高の知的エンターテインメント!
日本の美術館大研究
一、日本美術の五大絵師の名作はここにある大調査
二、日本美術の七不思議ミステリーツアーへ
三、ここがすごいぞ! MOA美術館
四、専門美術館&ミュージアムグッズの実力検証
などf:id:tanazashi:20170719110143j:plain

Museo Paradiso! 日本美術は世界最高の知的エンターテインメントです! 和樂編集長 セバスチャン高木・・・和楽のサイトは三誌の中でもビジュアルに凝っています。

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そう、日本美術は美しくて、ポップでモダンで心が浮き立つもの。少しだけ視点を変えてみると、史上最高の知的エンターテインメントとして見ることができるのです。美術館は日本美術が描かれた時代の息吹、歴史や流行、絵師の技と心にふれることができる最高の場所!ね、これはまさに美術館天国!ですよね。

炎天下、待ち時間必至の特別展や企画展に並びたくない人は、ビジュアル重視の和楽を観て楽しんではいかがでしょう。(いち早く品切れしてしまいました)  

和樂(わらく) 2017年 08 月号 [雑誌]

和樂(わらく) 2017年 08 月号 [雑誌]

 

 

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サライ 2017年 08 月号」 

サライ 2017年 08 月号 [雑誌]

サライ 2017年 08 月号 [雑誌]

 

 

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

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「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」若林正恭 著(KADOKAWA

読者の共感を呼んだ前作「社会人大学人見知り学部 卒業見込」を出発点に、新たな思考へと旅立ったオードリー若林の新境地!

キューバはよかった。そんな旅エッセイでは終わらない、間違いなく若林節を楽しんでもらえる、そして最後はホロリと泣ける、待望の書き下ろしエッセイです。

「俺は5冊くらいタイトル買いして、50ページくらい読んでつまんなかったら捨てる、っていうのを繰り返してて。新書のコーナーが好きで、タイトルをダーッて読んでいくと、まさに今知りたいってことがタイトルでドンってくるときがあって」

オードリー若林さんの話を聞くと、この人もまた、呼吸のように本を読まないと生きてゆけない人なのだということがわかります。周囲に同調しながら生きているのが普通の私たちであるなら、多分若林さんは世間の常識や評判から自分が剥離していることを自覚しているのでしょう。読みながら自分の位置を確認しているのだと思います。

表現することは裏返すと自分を探すことです。社会生活の中でくすぶっている気持ちや折り合いがつけられない思いと向き合わざるをえない仕事です。立場は違いますが放送局員の中にも自分探しを続ける人はいて、そんな人に若林さんの"まじめな"著作は刺さるように思えます。 

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬

 

 

珍しい日記

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「珍しい日記」田中珍彦*1 著(木楽舎

世界初、門外不出のドイツの至宝バイロイト祝祭劇場を、そっくり日本に引っ越しさせた、苦難と痛快の実録奮戦記。1989年9月3日、東急文化村グランドオープン。柿落としを飾る、ワーグナーのオペラ・タンホイザーが遂に実現した。そして渋谷は、文化村になった。この日記には、グローバル社会に役立つ外国人との交渉術の見本がある。

月刊『ソトコト』を発行する木楽舎は「持続可能な社会のあり方を追求するライフスタイルを目指す」というビジョンが立っている出版社です。どちらかというと自然志向であり環境志向の流れを感じます。その出版社が目をつけたのが若者の街・渋谷。センター街に代表される消費志向の街に同居する文化の拠点「東急文化村」の仕掛け人の本を出しました。変化を遂げつつある街の未来を考えるとき、開くと楽しい本といえそうです。 

珍しい日記

珍しい日記

 

 

*1:(たなか・うずひこ) 1940年生まれ、東京都出身。1965年、早稲田大学第一文学部卒業。1974年、株式会社東急エージェンシー入社。1984年、株式会社東急百貨店に転籍し、Bunkamuraの開発計画からかかわる。1988年、株式会社東急文化村の設立と同時に取締役に就任。オーケストラや劇団とフランチャイズ契約を結び、お互いの特性や魅力を最大限に生かす「フランチャイズシステム」、企業が文化・芸術を長期的に支援・育成する日本初の「オフィシャルサプライヤーシステム」、文化・芸術の各界の第一線で活躍する方々が企画・運営に加わるプロジェクト「プロデューサーズ・オフィス」などを確立。Bunkamuraは1999年度の「メセナ大賞」受賞に輝いた。2007年に同社代表取締役社長に就任。現在は一般社団法人日本クラシック音楽事業協会顧問など兼任。

Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男

佐々木健一ディレクターの本です。

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「Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男」佐々木健一*1 著(文藝春秋 

藤田哲也という天才科学者(1920-1998)がいた。専門は気象学。32歳のとき渡米し、シカゴ大学の教授にまで上り詰め、「Mr.トルネード(竜巻)」と呼ばれた。藤田の人類への最大の功績は、1970年代に続発していた飛行機事故の原因を「ダウンバースト」という気象現象だと突き止め、飛行機事故を激減させたことである。
ダウンバースト」とは、突発的に非常に狭い範囲で生じる下降気流であり、起きる直前でなければ、予測不能である。今日、私たちが安心して飛行機に乗れるのは、彼のおかげなのだ。
だが、この功績は、藤田が活躍したアメリカでは広く知られているが、日本ではほとんど知られていない。それだけではない。藤田がどのような人生を歩んだのかが、わかってきたのは、ここ数年のことだ。
本書の著者・佐々木健一氏は、そんな藤田哲也の人生に強く惹かれ、アメリカ全土、総移動距離3万キロを超える取材を敢行して、その人生を追いかけた。
そして、NHKのテレビ番組「ブレイブ 勇敢なる者」シリーズの第一弾として、藤田の人生を描く「Mr.トルネード」を制作した(2016年5月2日放映)。

http://www.nhk-ed.co.jp/files/5214/9329/9567/docudocu1.jpg
本書は、「ダウンバースト」現象の解明を軸に、番組には収めきれなかった成果を盛り込んで書き上げられた、世界初の藤田哲也の本格的評伝である。

出版物がテレビの企画の母になることは珍しくありません。テレビの放送と出版化が同時進行するとテレビで見て本で深めるという読者にとっての楽しみは増えます。本書は「ドキュメンタリストから異端視される」という異色のディレクター・佐々木健一さんの作品と聞くと放送関係者は手に取らざるを得ません。

bunshun.jp

2016年5月2日に放送された、ブレイブ 勇敢なる者「Mr.トルネード~気象学で世界を救った男~」(NHKエデュケーショナル)は科学ジャーナリスト賞2017に輝いた佳作です。

Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男
 

 

*1:1977年、札幌生まれ。早大卒業後、NHKエデュケーショナル入社。ディレクターとして『ブレイブ 勇敢なる者』「Mr.トルネード」「えん罪弁護士」などの特別番組を企画・制作。NHK以外でも『ヒューマン・コード』(フジテレビ)を企画・制作。『ケンボー先生と山田先生』で第30回ATP賞最優秀賞、第40回放送文化基金賞優秀賞、『哲子の部屋』で第31回ATP賞優秀賞、『Dr.MITSUYA』で米国際フィルム・ビデオ祭 2016ドキュメンタリー部門シルバースクリーン賞、「Mr.トルネード」で科学ジャーナリスト賞2017、「えん罪弁護士」で第54回ギャラクシー賞選奨、第33回ATP賞奨励賞を受賞。『辞書になった男』(文藝春秋)で第62回日本エッセイストクラブ賞を受賞。最新刊は『神は背番号に宿る』(新潮社)、『Mr.トルネード』(文藝春秋)。