本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

二つの顔を持つ「文庫本」

店の入り口に週間ベストセラーのコーナーが登場しました。

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12月下旬の文庫本部門のランキングです。 

  1. 「悲しみのイレーヌ」ピエール・ルメートル著(文藝春秋
  2. 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」村上 春樹著(文藝春秋
  3. 「フォルトゥナの瞳」百田 尚樹著(新潮社)
  4. 「シネマの極道―映画プロデューサー一代」日下部 五朗著(新潮社)
  5. 「雑文集」村上 春樹著(新潮社)

人気を呼んだ新刊書も時がたてばいずれ文庫化されます。エンタティンメント系の書籍ならばドラマ化されることもあり、人気に再び火がつくこともあります。

文庫本と単行本はまったく同じ形で出版されるとは限りません。内容によっては再校正されていたり、後書きが追加されたりします。見た目の変化も見逃せません。本のサイズが小さくなるので、単行本と同じデザインでは、並べたときデザインが隣の本に負けてしまうこともあるからです。版元では表紙デザインを変えたりします。細かなところでは「オビ」と呼ばれるカバーを出版部数が伸びるごとに部数の数字だけ書き換えたりすることもあります。

ランキングに入った「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」も表紙が大きく変わりました。文庫本ではモーリス・ルイス氏による装画が広い面積を占めています。

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左が文庫、右が単行本の表紙です。装幀はいずれも大久保明子氏が担当しています。「火花」の装幀でも知られる人です*1単行本の印象を壊さないようにしながら、小さくなったサイズを生かす表紙をどのように作り上げるのか?文庫本を手にした読者だけがその差を楽しむことができます。大きさに制約される文庫本には、制作に関わる担当者たちの創意が見えてくるような気がします。