本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

制作者の心を動かす本

『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』カール・イグレシアス 著(フィルムアート社)訳者の島内哲朗氏からメッセージをいただきました。

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『「感情」から書く脚本術』の肝は観客以前に制作者の心を動かせという事ですが、本書で解説される多くの技法は制作者がコンテンツの内容を評価するポイントでもあります。特に海外の制作者と対話をする場合。そんな旨みも併せ持つ本だと思います。

よくきく話ですが、成功したハリウッド映画の脚本には共通したセオリーがあるといいます。言葉も週間も異なる世界中の観客を相手にするためには、誰もが共感する「共通鍵」といえるものを作品に仕掛けなくてはなりません。長い伝統と優秀な人材を抱えたハリウッドは、観客の心をつかんで離さないためのノウハウを蓄積してきました。川上量生氏は「コンテンツの秘密」の中で「名作を読むと感動するのは、脳にある共通の鍵穴にカギが刺さるようなもの」と表現していますが、そんなものかもしれません。

制作者はいわば共通カギ作りのプロです。日本のようにその場の空気を読めば通じる世界を相手するのではなく、海外の制作者と渡り合うためにはカギ作りのテクニックを学び直すのも大切だと思います。

さて、ドラマ脚本だけでなく、ドキュメンタリーにもセオリーがあります。島内氏の訳本にもうひとつ本屋の看板商品となっている本があります。

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「ドキュメンタリー・ストーリーテリング―「クリエイティブ・ノンフィクション」の作り方」シーラ・カーラン・バーナード 著(フィルムアート社)

従来の「ドキュメンタリー」の枠を超え、あらゆる物語創作に必須の有機的なプロセスと哲学、世界水準のノウハウを凝縮。押し付けず、嘘はつかず、世界で通用する、のめりこませる映像の撮り方とは。

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昨年秋リリースされた映像制作(特にドキュメンタリー)の教則本です。ドラマ制作者より、取材やドキュメンタリーに携わる制作者が多いのが放送局ですから、当然と言えば当然です。映像コーナーでは平積みの座をずっと独り占めするほど、息長く放送局員の関心を集めています。

読み手と書き手の橋渡しに少しでもお役に立てればうれしく思います。