本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

ながく読み継がれて欲しい本です。

涼しい目をした少年が コミックのコーナーに登場ました。 

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「光とともに・・・~自閉症児を抱えて~」(別巻)(書籍扱いコミックス) 戸部けいこ 著(秋田書店

光とともに…自閉症児を抱えて~」は、2000年から月刊フォアミセスにて連載されていたコミックです。自閉症児とその家族が抱えるエピソードを描いた作品は、2004年には文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞し、テレビドラマ化もされて話題を呼びました。

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漫画の中で障害者を描くことはながらくタブーとされていましたが、自閉症の子どもとその親の葛藤を描いた作品です。2010年1月戸部さんの逝去により2010年5月号で連載は終了することになります。その後のストーリー2話分はネームの形式で遺されていました。そのネームに河崎芽衣*1がペン入れを行い、正式な完結編として掲載誌であるフォアミセスで公開されました。

 放送局員の中には福祉番組を担当する制作者も何人かいます。当然この作品のことは知っていて、「子どもの同級生が自閉症だったためその子を通して自閉症児とその家族の葛藤を描いた作品です。淡々と取材し、世間に対して自閉症の理解を静かに伝える姿勢を持つ作家だったと」聞きました。

戸部さんの未発表の最後の原稿は、こんなせりふで終わっています。

「これからも壁にぶつかり 思い悩む日は来るだろう。現実は厳しくて不安はいっぱい。でも逃げずに何か方法をみつけていこう。そして何か一つでも良いことをみつけてゆくの。どんなちっちゃなことでもかまわない。笑顔とともに・・・この世の光とともに・・・」

 

*1:1985年に月刊プリンセス秋田書店)でデビューし、それ以降もずっと交流を続けてきた漫画家