荻窪の小さな書店titleまで足を伸ばしました。
場所はJR荻窪駅から青梅街道沿いを10分ほど歩いたところにあります。扱っている本はすべて新刊本。小さな店内には放送局員が手に取りそうな本が並んでいます。30代前後の若い人が出入りしていて地元に密着した書店であることもわかります。
店の奥はコーヒーカウンターになっています。急な階段を上った二階はギャラリー(高橋彩子さんの作品が展示中)。店の入り口ではリンゴの試食販売も実施中でした。
店長の辻山良雄さんと雑談。変な話ですが、店に一目惚れしてしまいました。その訳は棚を見ればわかります。
普通の書店は地域ごとの販売実績データをもとに版元から届く配本をそのまま並べます。客層に逢わない本も入っているため、そのままだと店の個性は出にくくなります。ここでは、並べたい本が品切れすると知り合いの取次や出版の担当者と直接連絡を取って補充することもあるのだそうです。
このスペースに、コミックはないだろうと思ったら、奥の棚に、萩尾望都や諸星大二郎がいました。壁には松本大洋のナンバー入りの作品があります。探していた「夕凪の街桜の街」こうの史代著を発見しました。本作は文化庁メディア芸術祭大賞を受賞した漫画です。
本のトビラの折り返しに、好きな言葉は「私はいつも真の栄誉をかくし持つ人間を描きたいと思っている」(ジッド)とあります。
そうやって人生を歩んでいる中でそれぞれ大切にしている本があります。それらの本は本屋さんの何処かに並んでいる。これって本屋はそのまま「その人が生きるということ」につながっているということだと思うんです。(辻山良雄さん)
著者のことばと書店のことばがシンクロする書店。荻窪の読者がうらやましいかぎりです。
さて、ほんとうに欲しかったのこうの史代さんの著作がもう一つあったのですがこちらは取り寄せのようです。原作を読みたかった。彼女の作品がアニメ化され近々公開されます。
劇場版「この世界の片隅に」。平凡な日常の持つ尊さが、カットから伝わってきます。