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本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

大竹昭子さんが選んだ今年の三冊

2016私の三冊

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大竹昭子(作家。東京都生まれ。上智大学文学部社会学科卒。ニューヨークに滞在中だった1979年より写真と執筆活動を開始。ノンフィクション、エッセイ、小説、写真評論など、ジャンルを横断した執筆活動を展開。須賀敦子を偲ぶ本も多い。2008年、短編小説「随時見学可」で第34回川端康成文学賞候補))さんが選んだ今年の三冊。

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1「屋根裏の仏さま」ジュリー オオツカ 著(藤原書店)

100年程前、夫となる人の写真だけを頼りにアメリカに嫁いでいった日本の娘たち。失望とともに結婚生活をはじめ、厳しい労働を強いられながら、子を産み育て、あるいは喪い、懸命に働いて、ようやく築いた平穏な暮らしも、日米開戦とともにすべてが潰え、砂漠のなかの日系人収容所へ―。「わたしたち」という主語を用いて、女たち一人ひとりの小さなエピソードがつぎつぎと語られるうち、その小さなささやきが圧倒的な声となってたちあがる、痛ましくも美しい中篇小説。

屋根裏の仏さま (新潮クレスト・ブックス)

屋根裏の仏さま (新潮クレスト・ブックス)

 

 

2「旅行記」佐藤貢*1 著(有限会社スカイ[iTohen press])

何にも属することなく自らを見つめ続ける孤高の芸術家、佐藤貢による自伝旅行記。

二十代のある日、ありったけの全財産である23万円とパスポートだけを握りしめ、“つっかけ”のまま上海行きの船に乗り込み、気が付けばアジア圏を中心にアメリカまで渡り9ヶ月間の放浪に出てしまった旅の記録。

「自分とは何者なのかを考えていた。逃れることの決して許されない『業』のようなものを感じていた。この世界に偶然などなく、全てはメッセージだと気づき始めていたのだ。」

www.skky.info 

自分について語ったものにはどこか自己愛がつきまとう。自分の「特別さ」に苦しんでいると言いながらも、実は酔っていたり、愛撫していたりする。放浪の旅本はそういうにおいをまといがちだが、その臭みがまったくないのはなぜか。それは彼がふつうでありたいと本心から願っているからだ。ふつうでないことに固執し、それを価値づけようとする「芸術家」にありがちな態度とは真逆の精神で生きているからなのだ。

3「どうぶつのことば──根源的暴力をこえて」鴻池朋子 著(羽島書店)

動物たちの言葉を借りに旅にでた――
鴻池朋子が、語り、書いた。
◎リマッピング日比谷プロジェクトシンポジウム
「都市と森の境界に現れるアート」
人間と動物の境界に出現するアート 矢野智司(教育人間学)
「人間の向こう側」へ 石倉敏明(芸術人類学)
つくれないアーティスト 鴻池朋子
トークセッション 矢野智司×石倉敏明×鴻池朋子
◎対話の旅
「贈与」と「交換」 矢野智司(教育人間学)×鴻池朋子
初めてつくるもの 吉川耕太郎(考古学)×鴻池朋子
同じものではいられない 村井まや子(比較文学・おとぎ話研究)×鴻池朋子
夜の空を歩く子 福住廉(美術評論家)×鴻池朋子
鴻池朋子 書下ろし
風が語った昔話/描くことも食べることも/想像力/動物、猟/動物の言葉を借りにいく/物語るテーブルランナー/地球の断面図/ある三匹の語り/皮緞帳をくぐり

どうぶつのことば──根源的暴力をこえて
 

 

*1:漂流物や、役目を終えて誰かが捨ててしまったものや、捨てられようとしているものを使って作品をつくり、各地で発表を行っている作家