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市田隆さんが選んだ今年の三冊

2016私の三冊

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市田隆(朝日新聞社編集委員。1964年生まれ。読売新聞社を経て2003年入社。11年から特別報道センターで調査報道を担当する編集委員。これまで主に政官業の癒着や金融業界の不祥事をテーマにした取材を担当))さんが選んだ今年の三冊。

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1「ヒトラーの娘たち――ホロコーストに加担したドイツ女性」ウェンディ・ロワー 著(明石書店

ナチズムが生んだ一般のドイツ女性たちは
`血塗られた地'(ブラッドランド)で何を目撃し、何を行ったのか。
レイシズム国家主義のさいはてに待つ、知られざる歴史の闇に迫る。

ナチス・ドイツ占領下の東欧に赴いた一般女性たちは、ホロコーストに直面したとき何を目撃し、何を為したのか。冷戦後に明らかになった膨大な資料や丹念な聞き取り調査から、個々の一般ドイツ女性をヒトラーが台頭していったドイツ社会史のなかで捉え直し、歴史の闇に新たな光を当てる。

想像せよ、自分が立っている場所はすでに「灰色」ではないか。
自戒せよ、大きな流れの中で自分を押しとどめるだけの確たる信念はあるか。(「監訳者解題」より)

ヒトラーの娘たち――ホロコーストに加担したドイツ女性

ヒトラーの娘たち――ホロコーストに加担したドイツ女性

 

背景や職業が異なるドイツ人女性たちがナチスの大量虐殺にいかに関わったのかを詳細に調べたノンフィクション。 

2「プルートピア 原子力村が生みだす悲劇の連鎖」ケイト・ブラウン 著(講談社

 “プルートピア”は「特異なユートピア」である。アメリカはワシントン州東部のリッチランドに、ロシアはウラル山脈南部のオジョルスクに、プルトニウムの街・原子力村としての“プルートピア”をつくりだした。本書は、東西冷戦という境界を越え、プルトニウムが米ソを結びつけて「歪んだ理想郷」を生みだした経緯に注目する。インタビューと膨大な公文書記録をもとに、チェルノブイリ、福島と繰り返されてきた惨劇の源泉を掘り下げる。

プルートピア 原子力村が生みだす悲劇の連鎖

プルートピア 原子力村が生みだす悲劇の連鎖

 

 

3「ジョイランド」スティーヴン キング 著(文藝春秋

海辺の遊園地、ジョイランド。彼女に振られたあの夏、大学生の僕はそこでバイトをしていた。そこで出会った仲間や大人たちとすごすうち、僕は幽霊屋敷で過去に殺人があったこと、遊園地で殺人を繰り返す殺人鬼がいることを知る。もう戻れない青春時代の痛みと美しさを描くキングの筆が冴え渡る!感涙必至の青春ミステリー。

ジョイランド (文春文庫)

ジョイランド (文春文庫)