新聞の書評・コラムのページを開くと「そして生活はつづく」(星野源 著)が取り上げられていました。書評に取り上げられてから注文するようではいけませんが、取り上げられ方と実際の売れ方を見比べて軌道修正するのは書店員にとっては恥でもなんでもありません。ちゃんと仕入れていた2冊を並べて置くと、ちょっと不思議な存在感が出てきました。トップスターのエッセイ集は幅広い世代に浸透しつつあることが改めてわかります。
少年時代は親から「あんたは不細工で足が短くて、特徴もない」と言われ続けた。「目立とうなどという向上心」のない普通の子だったという。この手の自分を卑下する告白は、多くの場合むしろ鼻につく。だが星野源の場合は、納得させられる。[文]速水健朗(朝日新聞2017年01月29日)
目立たない自分、人に覚えてもらえないコンプレックス。星野源の魅力は、現在もまだそれを引きずっているように見えるところです・・・そう言われてみると、誰しもがもっている劣等感のようなものがこの人の最大の武器であることが見えてきます。「私は特別な存在ではないですよ」といつのまにか相手の懐深くに入り込んでしまう所にこの人の天賦の才を感じます。
「そして生活はつづく」(文藝春秋)
携帯電話の料金を払い忘れても、部屋が荒れ放題でも、人付き合いが苦手でも、誰にでも朝日は昇り、何があっても生活はつづいていく。ならば、そんな素晴らしくない日常を、つまらない生活をおもしろがろう。音楽家で俳優の星野源、初めてのエッセイ集。巻末に俳優・きたろうとの文庫版特別対談「く…そして生活はつづく」も収録。
「働く男」(文藝春秋)
音楽家、俳優、文筆家とさまざまな顔を持つ星野源が、過剰に働いていた時期の自らの仕事を解説した一冊。映画連載エッセイ、自作曲解説、手書きコード付き歌詞、出演作の裏側ほか、「ものづくり=仕事」への想いをぶちまける。文庫化にあたり、書き下ろしのまえがき、ピース又吉直樹との「働く男」同士対談を特別収録。