「1分で話せ」伊藤羊一 著(SBクリエイティブ)
口コミで広がり、17刷21万部売り上げた本です。
職場や学校で人前に出て発表しなければならない機会が増えています。
組織の中で黙々と作業に取り組んでいる時代ではもはやありません。
なぜなら自分の価値を自分で高め、信用を積み上げていかなければならないように、社会自体が変わっているからです。
人に自分の考え方をはっきり伝え、人を動かすことがもとめられます。
人を動かすと言う結果を出すためにはどうすればいいのか。
プレゼンテーションの極意は「最初に結論を述べることだ」と本書は言い切ります。
男性である私は「ごく当たり前のことじゃん。いつもやっているし」と思って読みましたが、コアな読者層は私のような層ではありませんでした。
読者の四割は女性。しかも20代の率が類書に比べて際立っています。
性差をことさら触れたくはありませんが、どうやら本書のヒットの背景には男女の持つ違いがあるようです。
このことは「新世界」(西野亮廣著)でも触れられていましたが、結論を好む男性に対して会話の過程を重視する女性の違いにルーツがあるようです。
しかし、女性の社会進出がもとめられる時代、ビジネスの現場では過程をいくら説明されても意味はありません。
そこに悩みを感じる読者層がいたのです。
本書の極意は単純明快です。
プレゼンのゴールを設定し、根拠を示す。根拠は三つ用意し、結論には一度耳にしたら忘れないような「超一言」を用意すること。
この二行では本にならないので、実例をいっぱいつけてまとめています。
ある程度できる人が読む必要はない本ですが、部下を指導する立場になって、プレゼンに悩む部下を抱えた時、その人ににそっとアドバイスするには最適の本です。
「プレゼンや伝え片の教科書は大量に書店に並んでいますが、『短く話す』ことに焦点を絞った本は近年あまり見かけない印象がありました。そこを狙いつつ、著者が長年培ってきたコミュニケーションの基礎を改めて整理しました」(編集担当の多根由希絵さん)