本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ

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「自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ」岡映里 著、 瀧波 ユカリ 画(KADOKAWA

『境界の町で』で鮮烈なデビューを果たした岡 映里が、うつ症状と向き合い「ごきげん」な自分を取り戻すまでの試行錯誤の1年半を書き下ろした、今までにないうつ回復エッセイ。

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人気漫画『臨死!!江古田ちゃん』『ありがとうって言えたなら』の著者、瀧波ユカリによる描き下ろし漫画も収録。自分と向き合うこと、自分を愛すること、あなたはできていますか?

f:id:tanazashi:20170712114652p:plain「病気は確かに自分のせいではないけれど、病気と付き合っていくやり方は自分で決められるんだ」と気付いた著者の回復の記録です。

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本書のターゲットが若い女性ということもあるのでしょう。エッセイをわかりやすく表現したイラストが闘病記特有の雰囲気を変えています。面陳したところ動きが出始めました。

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困っている。しかし人に相談できないという人が、快復に向けて歩き出すきっかけになりそうな本と言えそうです。

 

 

週間ベスト10 2017.07.11

ランキングです。 

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東京堂書店神田神保町店調べ(7月11日)

 

1「楽天の日々古井由吉 著(キノブックス)

恐怖が実相であり、平穏は有難い仮象にすぎない。現代日本最高峰の作家による、百余篇収録の最新エッセイ集。短篇小説「平成紀行」を併録。

楽天の日々

楽天の日々

 

 

2「蔵書一代―なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか」紀田順一郎 著(松籟社

やむをえない事情から3万冊超の蔵書を手放した著者。自らの半身をもぎとられたような痛恨の蔵書処分を契機に、「蔵書とは何か」という命題に改めて取り組んだ。近代日本の出版史・読書文化を振り返りながら、「蔵書」の意義と可能性、その限界を探る。

蔵書一代―なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか
 

 

3「今日はヒョウ柄を着る日」星野博美 著(岩波書店) 

『みんな彗星を見ていた』『コンニャク屋漂流記』『島へ免許を取りに行く』『転がる香港に苔は生えない』の人気作家が新境地をひらく、最新エッセイ集。戸越銀座のお年寄りがまとうヒョウ柄の存在に気づき、人間界―動物界のハイブリッド性に敏感になった著者は、いつしか若い世代―お年寄り、記憶―真実、現世―あの世などの境界線上を旅し始めていた……。 

今日はヒョウ柄を着る日

今日はヒョウ柄を着る日

 

 

4「鮎川哲也探偵小説選」鮎川哲也 著(論創社

戦後推理小説文壇の巨匠、鮎川哲也の知られざる作品がよみがえる! 未完の遺稿「白樺荘事件」、ファン待望の単行本初収録。雪の山荘を舞台にした連続殺人事件に名探偵・星影龍三が挑む「白の恐怖」を半世紀に復刻し、アリバイトリックを扱った「青いネッカチーフ」、ロマンチシズムの色気が漂う「寒椿」、無邪気さの中に恐怖を描いた掌編「草が茂った頃に」など、単行本未収録作品を一挙集成。別名義で発表された十二作の絵物語も挿絵付きで収録。

 

  

5「老い荷風川本三郎 著(白水社

第一人者の視点と筆さばき。『〓(ぼく)東綺譚』以降の作品と生活を中心に、老いを生きる孤独な姿を描く。

老いの荷風

老いの荷風

 

 

6「文学効能事典 あなたの悩みに効く小説」エラ・バーサド、スーザン・エルダキン 著(ジービー)

小説で愉しむ「病」と「悩み」の処方箋。

百年の孤独』、『華氏451度』、『秘密の花園』、『老人と海』、『一九八四年』、『嵐が丘』、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、『ねじまき鳥クロニクル』...。
古今東西の名作文学作品があなたの悩みに効く「薬」になる! (かもしれない)。 

文学効能事典 あなたの悩みに効く小説

文学効能事典 あなたの悩みに効く小説

 

 

7「「男はつらいよ」を旅する」川本三郎 著(新潮社) 

西行種田山頭火のように放浪者であり、鴨長明や尾崎放哉や永井荷風のように単独者であった車寅次郎。すぐ恋に落ち、奮闘努力するもズッコケ続きで、高倉健の演じる役とは対照的な男―。なぜ、彼はかくも日本人を惹きつけるのか?リアルタイムで「男はつらいよ」全作品を見続けた著者もまた旅に出て、現代ニッポンのすみずみで見つけたものとは。寅さんの跡を辿って“失われた日本”を描き出すシネマ紀行文。 

「男はつらいよ」を旅する (新潮選書)

「男はつらいよ」を旅する (新潮選書)

 

 

8「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」川上和人 著(新潮社) 

出張先は火山にジャングル、決死の上陸を敢行する無人島だ!知られざる理系蛮族の抱腹絶倒、命がけの日々!すべての生き物好きに捧げる。 

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

 

 

9「夫・車谷長吉」高橋順子 著(文藝春秋

十一通の絵手紙をもらったのが最初だった。直木賞受賞、強迫神経症、お遍路、不意の死別。異色の私小説作家を支えぬいた詩人の回想。

夫・車谷長吉

夫・車谷長吉

 

 

10「東京 わざわざ行きたい街の本屋さん」和氣正幸 著(ジービー)

東京には、個性豊かな“街の本屋さん"がたくさんあります。 工夫を凝らした棚作り、見た人がワクワクできるラインナップ、ほっと落ち着ける空間、本の魅力をより多くの人に伝えるイベント……。 その街の風景になじみ、地元の人々に愛されながら、唯一無二の魅力を持つ存在。本書では、そんな東京の“街の本屋さん"を、エリア別に130店紹介したガイド本です。 160ページ、オールカラーで写真と地図付き。すべてのお店の外観写真と、目印になるものも紹介しているので、道に迷うことなくたどり着けます。 本書を片手にぜひ、本屋めぐりを楽しんでください。 

東京 わざわざ行きたい街の本屋さん

東京 わざわざ行きたい街の本屋さん

 

ブラックボックス化する現代 変容する潜在認知

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ブラックボックス化する現代 変容する潜在認知」下條信輔*1 著 (日本評論社

私たちの現代社会は巨大化し複雑化して、作動原理がわからないブラックボックスと化してきたのではないか。そして私たち自身の深層心理をも、受け身の反応マシンのようなものに変えてしまうのではないか――。

人工知能や「心を読む技術」の進展がもたらした、かつてないジレンマとは。さまざまな社会事象の分析を通して、現代が直面するリスクを横断的に見据える視座を示す。 

これから先「予測が当たらなくなる」「過去のブラックボックス化が起きる」「偽装が増える」という三つの予測に加えて、現代人の「ブラックボックスであっても受け入れる習性」はますます強まるだろうと著者は予測します。心のブラックボックス化とは、刺激に対して複雑な判断ができず、型にはまった反応しかできなくなることを言うのだそうです。主体的な判断を停止し、複雑なシステムに依存してしまうことは、今でも日常的に起きていますが、それでも重大な支障が起きないことが「安心」という"不安"を生み出し続けているように思えます。まさに技術と哲学とが融合したような世界にどのように向き合うか、手がかりを掴もうとする努力が必要なのでしょう。 

 

 

 

*1:認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学Ph.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。

急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。

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「急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。」小霜和也 著(宣伝会議

広告業界や企業のマーケティング部署はまさにいま、「デジタルクリエイティブ」の見直しが求められています。
まず目の前の課題は、「Web動画」をいかに「WebCM」にするかである、と著者は語ります。

アドテクノロジーが進化し続けているにもかかわらず、Webでは成果が不確実なバズ動画や、Webの特性を無視してテレビCMや商品解説トレーラーをそのまま配信するなど、メディア運用者とクリエイティブの寸断によってコミュニケーションが最適化できていない。
「動画」ではなく「CM」としてきちんと成果を出すやり方を取らなければいけない。そのことによって、Webとマスは横並びの、一続きのものとして統合できるのだと。

本書は、マスとWebを横断したコミュニケーションで高い実績を持つ筆者が、自身の仕事の中で培った「デジタルクリエイティブ」の成功例、WebCMの具体的な作り方を中心に、マスとWebをどう統合すれば成果に
つながるかをクリエイティブ視点で解説しています。
商品によってはWebCMをテレビCMとして機能させることも可能で、そういったノウハウを広く公開します。
さらには、WebCMの次のステージ、デジタルクリエイティブの今後の展望についても言及しています。

本当に役に立つデジタルの文脈とノウハウを、多数の実例をもとに丁寧に解説、デジタル広告の原理原則を押さえ、キャンペーン全体の構成からクリエイティブのポイント、さらに重要度が高まっている運用からマネジメントの基本まで、今まさに必要とされる知識を網羅した1冊です。

内容紹介を読んでも何を言っているのかわからないのが広告業界の悪い癖です。カタカナ用語を羅列しないと伝わらないのか、伝えようとする気がないのか困ったことです。これまでは見るだけだったコマーシャルが、ネット上では触って動かしたり、体験したりすることができる。そんな変化を先取りして新しいコマーシャルに挑む人向けの本のようです。放送局員には直接ヒットしそうな本ではないかもしれません。 

急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。

急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。

 

 

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

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「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」川上和人 著(新潮社)

出張先は火山にジャングル、決死の上陸を敢行する無人島だ!知られざる理系蛮族の抱腹絶倒、命がけの日々!すべての生き物好きに捧げる。

「バッタを倒しにアフリカへ」 前野ウルド浩太郎 著(光文社)となぜか混同されて問い合わせが相次いだ本です。こちらの方がハードカバーなのにやや印象が薄いのは「バッタ」と「鳥類」の質感の違いなのでしょうか。アウトドア理系の奮戦記は仰天する事実がてんこ盛りなところが興味をひくのでしょう。

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バッタにしろ鳥にしろ、人間が住みやすいところに奴らは生息していません。そのため研究者たちはインディ・ジョーンズばりの冒険を積み重ねます。タイトルには冒険の道を歩まざるを得ない著者の思いがこめられていて、その意外性が的を得ていると書店員は絶賛しています。 

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

 

 

バッタを倒しにアフリカへ

表紙の人物を見てフラッと連想したのが仮面ライダーでした。"バッタを倒し"にというコピーが想起させたのかもしれません。目を凝らして見直すとどう見ても写真の人物はライダーではありません。でもなんとなしに著者のサービス精神が感じられる一冊です。

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「バッタを倒しにアフリカへ」前野ウルド浩太郎 著(光文社)

バッタ被害を食い止めるため、バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。それが、修羅への道とも知らずに…。『孤独なバッダが群れるとき』の著者が贈る、科学冒険就職ノンフィクション!

無味乾燥に見える論文も、著者がその論文に格闘する姿が見えてくるとグッと近い存在に見えてきます。「それは邪道だ」と言われるかもしれませんが、メディアがドンドン拡張し、手軽に発信ができる時代に読者が求めているのは「その周辺の事情」も含めた物語です。

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人に対する関心が感動に切り替わり、その道を目指す志になる。そんなきっかけで専門家になった人は少なくありません。 

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

 

 

 

人形の国 7月のこのマンガがすごい

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オトコ編一位

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「人形の国(1)」弐瓶勉 著(講談社

遺跡層におおわれた巨大人工天体「アポシムズ」。危険な「自動機械」や「人形病」に侵された者たちが彷徨う極寒の地表で暮らすエオ、ビコ、エスロー達は行軍訓練のさなか、強大なリベドア帝国の兵士に追われる不思議な少女を助ける。少女から託された「コード」と「七つの弾丸」、それは世界の運命を大きく変えるものだった……!! 『BLAME!』『シドニアの騎士』の弐瓶勉が描くダーク・アドベンチャー・ファンタジー開幕!

シドニアの騎士」「BRAM」と独特の世界観で読者を引きつける弐瓶勉の新作シリーズです。随所に埋め込まれたこの世界だけの用語が、謎解きの興味を呼び起こすところが人気の秘密かもしれません。当然アニメ化もされるでしょう。プロダクション・ポリゴンピクチャーの映像表現力が向上し続けるのも、原作との相性のよさから来るのかもしれません。