本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

週間ベスト10

新書部門のランキングです。 

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京都・アバンティブックセンター京都店調べ(3月21日~27日)

売れ筋の本は書店によって異なる場合があります。タイミングや土地柄、読者層の違いなど様々です。京都のこの書店のランキングはいかにも京都らしいと信じてしまうような誘惑感が漂う売れ方です。

 

1「京都ぎらい」井上章一 著(朝日新聞出版)

痛快な本でした。京都の書店で京都嫌いの本がいちばん読まれているのは、自分の顔を鏡で見る心境そのものです。私は京都生まれではありません。東京圏で生まれ育ちました。程度の差はかなりありますが、東京にも23区以外を辺境と思っている人はいますし、埼玉を自虐する本に人気が集まることもあります。著書は、こうした考え方がはびこる背景を大胆な推測で掘り下げていきます。南北朝の勢力争いや、討幕運動で辛酸を舐めた会津藩の事情にまで想いをはせながら、京都人なるメンタリティをこき下ろす筆遣いに溜飲が下がる思いがします。

2「学びとは何か――〈探究人〉になるために」今井むつみ 著(岩波書店

「学び」とは、あくなき探究のプロセスだ。たんなる知識の習得でなく、新しい知識を生み出す「発見と創造」こそ本質なのだ。本書は認知科学の視点から、生きた知識の学びについて考える。古い知識観──知識のドネルケバブ・モデル──を脱却し、自ら学ぶ力を呼び起こす、画期的な一冊。

3「鎌倉幕府と朝廷〈シリーズ日本中世史 2〉」近藤成一 著(岩波書店

3と10は全4巻構成の「シリーズ日本中世史」です。

史上初めて、京都から百里以上を隔てる僻遠の地に創られ、以後百五十年にわたって存続することになった新たな政権、鎌倉幕府。朝廷と並立する統治のあり方はなぜ生まれたのか。そのことは日本社会をどう変えたのか。源平争乱から幕府誕生、執権政治の時代、そしてモンゴル戦争を経て崩壊に至るまで、鎌倉幕府の時代を描き切る。

4「京大式 おもろい勉強法」山極寿一 著(朝日新聞出版)

言ってしまおう。グローバルな人材とは、みんなに「おもろいやん」と言わせる人だ。京大総長は、世界的なゴリラの研究者だ。大学運営は「猛獣使い」の要領だという。目標は「おもろいことをしよう」。これからを生きる人に欠かせない文系理系の壁を越える野生的発想術。

5「ハーバードでいちばん人気の国・日本」佐藤智恵 著(PHP研究所

日本の誇りである「新幹線お掃除劇場」からトヨタのすごさ、世界最古の先物市場・堂島米市場、そして福島第二原発を救った「チーム増田」まで、日本人が想像できないほど、ハーバード大学をいま「日本」が席巻している!

6「「憲法改正」の真実」樋口陽一小林節 著(集英社

自民党草案全体を貫く「隠された意図」とは何か?犀利な分析を、日本一分かりやすい言葉で語る「憲法改正」論議の決定版!

7「ガルブレイス――アメリカ資本主義との格闘」伊東光晴 著(岩波書店

二〇世紀アメリカを代表する「経済学の巨人」は何と闘い続けたのか?アメリカ思想の二極対立をえぐり、経済学研究の水準を社会思想史研究の水準に高めてきた著者が、病をおして筆を進めた渾身の作。ケインズによってイギリス論を、シュンペーターをかりてドイツ社会を論じてきた社会経済思想史研究三部作の完結編。

8「最新 新幹線事情: 歴史、技術、サービス、そして未来」梅原淳 著(平凡社

鉄道ジャーナリストが路線ごとの新幹線の特徴や歴史を解説し、今後を分析する。

3月に北海道に到達する新幹線。新幹線は今後どう整備される? リニア新幹線の命運は? 新幹線の過去・現在・未来を一冊で!

9「新・地政学 - 「第三次世界大戦」を読み解く」山内昌之佐藤優 著(中央公論新社

歴史学の泰斗」と「インテリジェンスの第一人者」が示す“羅針盤"

10「中世社会のはじまり」五味文彦 著(岩波書店

 中央集権的な古代国家から、様々な力のせめぎ合う中世社会へ。院政の開始、「家」の確立、武士の台頭、そして活力を増す地方の諸国など、噴出する変革の動きの中から、現代にも通じる日本文化の基本的枠組みが形づくられてゆく。家・身体・職能といった文化面にも注目しつつ、中世はじまりの時代のダイナミズムを描く。