本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

テレビマンのホンネが聞こえる本

視聴率調査で知られるのがビデオリサーチ。その会社が「放送」をテーマに出版物をつくった季刊の刊行物です。 

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「synapse」(ビデオリサーチ)

街場の書店ではあまり見かけない本だと思います。というのも中味はほとんど放送を中心としたメディアで働く人たちで占められているからかもしれません。最新号の内容を見てわかるように、地域放送局もふくめた放送局やその周辺で働く人たちが放送やメディアに対してどのような方向性で向き合っていったらいいかが語られています。 

テレビ視聴率でおなじみのビデオリサーチがお届けする、テレビとメディアを応援するマガジンです。

第10号「『ニュース』のこれから」

第1特集:
『ニュース』のこれから

有吉健郎/Yahoo!ニュース
渡辺洋之/日経電子版
新谷 学 /週刊文春
坪井蘭平/NHK ニュースチェック11
星野 誠 /BS-TBS
早河 洋 /テレビ朝日

まとめ:
『ニュース』のこれから

テレビ局ローカル探訪:TeNY テレビ新潟/福井テレビ
気鋭の報道マンinterview

MOVEMENT on TV:BSで20代女性向け番組という挑戦『男子視聴禁止』

私のつくり方:『ちばレポ』/千葉市

ROAD to 2020:三井不動産

時代の風 ~異業種に学ぶ~:鈴木規文/ゼロワンブースター

調査せよ!!リサーチボーイ:「リーク(報道)」の巻

鈴木おさむのWHAT'S on TV?:
YouTubeなど最短時間で見る世代、
テレビも15分がちょうどいい?

 この種の刊行物は、昔から「放送批評」とか「放送リポート」とかいった形で刊行されていました。「synapse」の違いは、登場する人たちの平均年齢が若いこと。新人体験記ゆ女性制作者の視点、地域放送局の仕事と、汗だらけの最前線の印象がかなり強く、「べき論」のような教条的な記事があまり見られないことにあります。

ネットも含めた制作環境の敷居がどんどん低くなり、番組作りにかけられる予算も効率化が求められる中、若い制作者は大変です。数年前に聴講した地域制作者フォーラムで、地域放送局の役員が「いまや制作者はディレクターの役割にとどまらず運転手やリポーター、カメラマンの仕事まで手を広げないとやっていけない時代だ」と話していました。なんのことだろうと後ろを見ると、超小型ムービーカメラの新商品を展示するブースがあります(ゴープロというカメラです10万円で4K画質の映像が撮れるスグレレものです)。ふつう放送機材はその耐久性から業務用のものを使うのがスジなのですが、その地方局では映像の品質がある程度確保できれば業務用を使う必然性はないと言い切っていました。

放送は許認可の縛りがある電波を使って成り立っていること。動画サーバーなどが必要なネットと比較し、一瞬で大量に情報を伝達できるメリットなどから、しばらくは優位性を持ち続けると思いますが、消費者が安くて質の高い情報を求め続けるのは世の習いです。そんな未来まで働く人たちの仕事の構造が変わらない保障はありません。

地域や会社、職種の枠を超えて顔の見える人たちが、仕事で直面した思いを交換できる場があるということは大切なことだと感じます。

 

www.videor.co.jp

 

 

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