本屋は燃えているか

ブックストアの定点観測

人が思いもしないことを思いつく人たち

エンタメ系の番組は放送作家の腕の見せ所です。放送作家はテレビづくりが最優先。しかも忙しいので本を出す人は思ったほど多くありません。

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「ひねり出す力 “たぶん"役立つサラリーマンLIFE! 術」内村宏幸 著(集英社クリエイティブ)

「アイデアは、決して降りてきたりはしません。ひねり出すものです」。
コント一筋28年。『サラリーマンNEO』『LIFE! ~人生に捧げるコント』の放送作家・内村宏幸(愛称あんちゃん)が初めて明かす仕事術。土壇場でひらめきと笑いを生み出すコント的センスや、アイデアをひねり出すヒント、発想力の磨き方からフリーランスの生存術まで、仕事を乗り切るエッセンスが満載。
このほか、オモシロすぎる内村一族物語、『笑いの殿堂』から『LIFE!』に至る番組遍歴、「セクスィー部長」など記憶に残るキャラクターたちの誕生秘話も収録。内村光良氏とのスペシャル対談では、いとこ同士の「ふだんはしないここだけの話」が読める! 各番組のファン、コント好きはもちろん、ビジネスパーソンにとっても見逃せない一冊。

 広い意味での「自己啓発書」でしょう。エンタメ系に所属する放送局員(ディレクター等)は「オレもあんな発想力があったらいいなァ」と半分思いながらこの本を手に取るものと思われます。

しかし、ほとんどの場合そんな簡単にシナリオが書けたら放送作家という職業はこの世に存在できません。それだけ彼らの能力は異質なのです。私もクイズ番組で放送作家の仕事ぶりを拝見したことがあります。とにかく集中力がスゴイという印象でした。クイズをつくるにあたり必須なのが「誰もが必要としない豆知識」です。クイズ一問つくるために関連する本を読みあさり、関係者に電話したり、場合によっては現場に行ったりと、いわゆる「くだらない」情報探しに徹夜までいとわないのです。

番組を面白くするというのは手段であり、本当は自分をびっくりさせることが目的なのではないかと思いました。「くだらないけど笑える」と受け手の側は作家がひねり出したネタを一瞬で消費します。放送作家の仕事は花火職人のような特殊な仕事なのです。