- 過剰に恐れてはいけないが、安心してはいけないことを気付かせてくれます。
「リスクを食べる: 食と科学の社会学」柄本三代子 著(青弓社)
「食べる」という日常生活を取り囲む社会的・経済的・政治的な背景を解きほぐし、不安とリスクコントロールを迫る科学言説の問題性に切り込む。食の安全・安心をめぐるリスクコミュニケーションの限界と可能性を照らし出し、食をめぐるリテラシーを提言する。
福岡伸一氏が「世界は分けてもわからない」 (講談社現代新書)の中で、コンビニで売られている食品の賞味期限の仕組みを説明していました。生物が生命活動を続ける上で、絶え間なく体内で物質の交換をする「代謝」という仕組みがあり、その代謝を抑制することでたとえばコンビニの食品の賞味期限が確保されるのだそうです。しかし、抑制する物質は必ずしも人間に都合のいい効果ばかりをもたらすことはないということが、この本を読むことで少し理解できました。
本書は社会学的な視点から食と安全について提言しています。食と安全の歴史は、企業側の努力で実現されたというより、消費者側の苦情や事故などの犠牲の上に積み上げられてきた成果のように思えます。その意味で「リスクを食べる」というタイトルは、現代人にとって忘れてはならない心構えのように思います。
リスクを食べる [ 柄本三代子 ]
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