土曜日ということもあるのでしょう。大学構内は静まりかえっています。書籍「東京藝大」によると、陶芸科のようにほぼ徹夜で作業を続ける学科もあるため、美校の門限はあってなき状態だと描かれていました。
それにしても人がいません。通りがかりの学生にたずねると、「今日はみな上野公園に行っているはず」という返事です。今年の藝大祭*1はすでに終了したはずなのに、いったい何が起きているのでしょう。
上野公園まで探りにいくことにしました。音大側の通りは"ハイカラ"なカフェや”シュッとした”カップルが肩を組んで談笑しています。美大側を歩きましょう。道すがら藝大にはもう一つ門があることを発見しました。工事中で閉鎖されています。通用門でしょうか。
上野公園までの道中は森の中を抜けていきます。ドイツの黒い森のようです。
途中発見した踊る集団。路上ダンスをしています。観客はいません。年齢から見ると学生さんっぽく見えますが、外国風の方もいます。藝大生ではないと見た目に決めつけられないところに奥の深さを感じます。
やや立ち止まって見ていると、ギャラリーが一人現れました。袋と傘を抱えている姿から想像するに、このあたりの住人さんかもしれません。でも本当は違って美大の教授かも知れません。いや、それは思い過ごしで住人かもしれません。堂々巡りに頭がくらくらしてきたのも藝大のなせる技です。
ようやく上野公園の広場が見えてきました。紅白のテントが立ち並び、愉快な音楽が聞こえてきました。
入り口には「コモゴモ展」東京藝術大学後援アートマーケットとあります。
KOMOGOMO展は、東京藝術大学出身の若手アーチストが主催する下維持湯津作品を発表・展示・販売するアートイベントです。
楽器にあわせて即興でなにやら描いている人がいます。情感あふれるメロディはプロの腕前。学園祭でホールのチケットが早々と売りきれるのもよくわかります。
今年で11回目を迎えるイベントは、10月15日(土)16日(日)にも開催されるようです*2。街の路上で販売している得体の知れないアートと違って、藝大生がこうして画材を買う資金を集めているのだと思うと、つい応援したくなります。
未来の画家の似顔絵サービス
こちらは小さな女の子を前に似顔絵を描く女性。輪郭線やアタリをとることなしに人物の表情が紙面に浮かび上がっていく様は、デッサンの千本ノックを浴びてきた絵描きさんの技術力を感じます。
平均相場はというと、1枚千円。将来の油絵画伯や日本画の大家(かもしれない)が描いてくれた自画像は先行投資としてはわるくありません。
超カワイイ銀細工
ブースの若者に聞くと、書籍「東京藝大」のことを知っている人は5人中2人いました。6割の人は本を読んでいないことがわかります。
木工職人ビックリのインテリア
さらに聞くと、出品者はOBが中心だが、現役の藝大生もお手伝いのためにかり出されるのだそうです。
使うのがもったいなくなる台所用品
目をひいたのが、鉄板の素材から鉄鍋を鍛造する過程を紹介しながら、商品をさばいていたこのコーナー。
鍋の取っ手を手に取ると、ずっしり重く、料理を作るのはもったいない気分になります。
お値段はというと、
すっかりファンになってしまいました。ニッポンのコンテンツを支えるのは君たちだ。(すなおに応援)
最後の秘境 東京藝大 [ 二宮 敦人 ]
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