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WIRED Vol27 特集・長沼伸一郎インタビュー

2月17日発売の「WIRED Vol27」が動いています。

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「WIRED Vol27」の表紙を飾る「Before and After Scienceサイエンスのゆくえ」というタイトル。理系というより哲学に近い香りが漂ってきます。

「人類に自由や進歩や豊かさをもたらしてくれるはずだった"科学"は、いつしか人を、科学自身を、窮屈な機械論的世界のなかに閉じ込めてしまった。"科学"は、いかにしてみずみずしさと驚きを取り戻すのか」・・・前書きが語るように、世界のありようを学び、未知の世界の扉を叩くことは、私たち人類だけが持つ特権であり、存在意義そのものです。しかし、謎の究明が進むたびにさらに強力な謎が私たちの前に姿を現しています。迷路に入り込んでしまったかに見える"科学"の今に私たちはどう向き合えばいいのか?方向性を見極めることから、未来の輝きを取り戻す試みが伝わってきます。

特集は、テクノロジーと科学の関係を見つめてきた科学哲学者・村上陽一郎のロングインタヴューを収録。さらに、この先科学は豊かさに満ちた「未知の世界」とどう向き合うのか、蔵本由紀長沼伸一郎、北野宏明、宇川直宏、ピーター・ペジックの5人の賢人に訊いた。  

科学番組の担当者によれば、特集の目玉は、異能の物理学者・長沼伸一郎に石川善樹(予防医学者)が訊ねたインタビュー企画だそうです。長沼伸一郎さんは理系の学生にはかなり知られた存在です。

1961年東京生まれの物理学者。「あまりにも大きな目標を持ち、それに固執したため居場所がなくなった」と大学院を中退。以後1年半、自室に閉じこもって理論物理の思考にふけったのち、独自のグループを作って新しい研究を目指した。26歳の時、手持ちの資金140万円をはたいて、87年「物理数学の直感的方法」(通商産業研究社)を自費出版。発売するやたちまち各大学の生協で売り上げ第1位を記録した。30年近くにわたってロングセラーになった不朽の名著。

経歴を見ただけでは違和感を感じる人がいるかもしれませんが、高校時代にさかのぼって長沼が出会った発見や疑問は、科学が不得意なものにとっても共感できるテーマです。そこから語りかける視点や志の高さがどうやら人気の秘密ともいえそうです。

「大学の問題は、そもそも解けないものが多いことに気が付きました。それまでのわたしは、どちらかというと、数学がもつ神秘的な力を信じていたようなところがありました。しかし、数学を勉強していくなかで、どうやら3体問題のようなことが、ほかにも色々あるんじゃないかと疑問に思えてきたのです」

wired.jp

タイトルだけで、理系専攻以外の初学者は腰が引けそうになりますが、高い評価を目にすると一度は手に取ってみたい気になります。

勉強というのは自分のためにやるもんじゃありません、
所属する社会や悠久の歴史のためにやるもんなんです。
知力というのも戦闘力なんですよ。

ameblo.jp

道に迷ったらいったん立ち止まり、高台によじ登って目指す方角を再確認することが大切だ。そんなことを教えてくれる記事に読者は惹かれたのかも知れません。 

 

 

長沼の著書「物理数学の直感的方法」は比較的手に入れやすい講談社ブルーバックスシリーズとして刊行されています。

http://wired.jp/wp-content/uploads/2017/02/170213-book-thumb-1024x682.jpg「物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬」長沼伸一郎 著(講談社

 

物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬〈普及版〉 (ブルーバックス)

物理数学の直観的方法―理工系で学ぶ数学「難所突破」の特効薬〈普及版〉 (ブルーバックス)