「教養としての10年代アニメ」町口哲生 著(ポプラ社)
受講条件は週20本の深夜アニメ視聴!?あまりの本気(ガチ)さにネットを中心に話題となった近畿大学の講義が遂に書籍化!!
教養という概念は「人格は形成されるもの」という考えと結びついている。人格を形成する役割はかつて哲学や純文学が担ってきたが、ゼロ年代(2000~09年)になると、若者に対するポップカルチャーの影響は無視できないものとなった。本書では、「10年代アニメ」(2010年代に放映されたアニメ)を、教養として分析することで現代社会や若者についての理解を深めていく。
<第1部 自己と他者>
第1章『魔法少女まどか☆マギカ』他者との自己同一化
第2章『中二病でも恋がしたい!』自意識と他者の存在
第3章『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』スクールカーストとぼっち
<第2部 ゲームの世界>
第4章『ノーゲーム・ノーライフ』ゲーム理論と社会適応第5章『ソードアート・オンライン』オンラインゲームと一人称視点
<第3部 未来社会の行方>
第6章『とある科学の超電磁砲』クローン技術とスマートシティ第7章『COPPELION』生き残りとリスク社会
<おわりに>
世間内存在としてのオタク/メタ視点を欠いた再帰性 等
若者がほとんどテレビを見ない時代です。放送局の調べによるとテレビを見る世代は50代以降が中心なのだそうです。募集される企画の重点項目は「若年層」なのだとか。スマホで動画をいつでもどこでも・・・という彼らにとって、ネットであろうが放送波であろうがかまいません。(その動きを受けて「ねほりんぱほりん」 みたいな企画も登場しています)一時期ほどの勢いは衰えたものの深夜アニメーション番組は健在で、46本(定時枠で)の新作番組が生み出されていることには改めてビックリです。
年とともに年齢層は底上げされるので、いずれ老人ホームで一番見られるコンテンツがアニメーションという時代がやってくるかも知れません。送り手である制作者も理解していて、物語の構造やテーマに時代性やメッセージを重視した(幼年層には小難しい)アニメ作品も増えています。過去の作品で提供された「知識」を下敷きにした続編や、視聴者の想像力に訴える「余白」の多い作品の増加は、アニメがもはや限られた年代だけの宝物でないことを示しているように思います。
50年代からアニメを見てきました。最近、職場で「劇場版アニメ」を見てきたと公言しても白い目で見られなくなった気がします。それは素直にうれしい。
著者から❤をいただきました。ありがとうございます。